■カルバペネム耐性腸内細菌目細菌 (CRE, Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae) |
|
1.CREの定義と疫学 |
イミペネムやメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬に対し耐性を獲得した腸内細菌目細菌。フルオロキノロン系やアミノグリコシド系などにも耐性を獲得していることが多い。 腸内細菌目細菌が起炎菌となる肺炎・尿路感染症で問題となる。また術後創部感染症や腹膜炎、膿瘍などの原因になる。敗血症などを引き起すと重篤化することが多く、米国では半数が死亡したと言われ警戒されている。 CREにはカルバペネマーゼ産生菌(CPE; Carbapenemase Producing Enterobacteriaceae)と非産生菌に分けられる。CPEのうち日本も含め世界中に広がっているのは、IMP型やVIM型、NDM型などのメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)のグループであるが、海外では、KPC型やOXA-48などを産生するCREも問題となっている。いずれもプラスミド伝達性であり、一つの菌種から別の菌種に遺伝子が移ることが出来るため、CPEでは厳密な対策が必要となる。 |
|
2.CREの菌種 |
菌種としては肺炎桿菌や大腸菌が主であるが、さらにKlebsiella oxytoca、Serratia属菌、Enterobacter属菌、Citrobacter属菌などがある。 |
|
3.CREの感染症法に基づく届出基準 |
次のいずれかにより耐性を確認する。 ア メロペネムのMIC値が2μg/ml以上 (又はメロペネムの感受性ディスクの阻止円の直径が22o以下) イ 次のいずれにも該当することの確認 (ア)イミペネムのMIC値が2μg/ml以上(又はイミペネムの感受性ディスクの阻止円の直径が22o以下) (イ)セフメタゾールのMIC値が64μg/ml以上(又はセフメタゾールの感受性ディスクの阻止円の直径が12o以下) 主治医は感染症を発症していると判断した場合7日以内に5類感染症として保健所への届出を行う。 患者発生時の届出票 わが国ではメロペネムには耐性を示すがイミペネムに感性を示すIMP-6産生菌が比較的高頻度分離されることに注意が必要である。 |
|
4.感染対策 |
伝播様式は基本的には手指または医療器具による接触感染であり、標準予防策を徹底すること、検出者に対しては個室隔離を含む接触予防策の遵守が重要である。 届け出基準に該当するCREが検出されたら、細菌検査室はICTメーリングリストで連絡する。また主治医は病棟医長、病棟師長、感染制御部と相談の上、患者を個室隔離し、接触予防策をとる。 CPEまたはnon-CPEでもIPM(R)またはMEPM(R)で原則個室での接触予防策を要する場合、病室手洗い場の排水口は、1日2回0.1%次亜塩素酸ナトリウムで30分間消毒する。 図 CRE, CPEの対応フロー図 CRE: カルバペネム耐性腸内細菌目細菌 CPE: カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌 接触予防策の解除は、カルバペネム腸内細菌検出部位(血液培養や再採取困難な部位からの検出例は便)からの検体による、菌陰性化または検出腸内細菌の薬剤感受性化(薬剤感受性がSと判定されるイミペネム・メロペネムの MIC ≦1μg/ml)を3回以上確認してから行う。 カルバペネム系抗菌薬の濫用は耐性菌選択圧の上昇につながるので適正使用に努める。 |
|
5.CREの治療 |
治療薬が限られるため、個々の抗菌薬感受性試験結果を参考に抗菌薬を選択する必要がある。治療に際しては感染制御部へ相談することが望ましい。チゲサイクリンなどが治療薬の候補として挙げられる。 |