■腸管出血性大腸菌 Enterohemorrhagic E. coli (EHEC) |
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■はじめに |
志賀(ベロ)毒素を産生する大腸菌である。志賀毒素には、1と2があり、両方産生する菌もみられる。志賀毒素2の毒性が強い。O157、O26、O111が多くみられるが、O抗原型が不明な株もある。 |
■臨床症状 |
潜伏期は、3~5日(2~9日)。微量の菌数(100個)で感染が成立する。下痢は水様性で、頻回(10〜20/日)、下痢出現後1〜2日で血便がみられ、強い腹痛、しぶり腹がみられる。EHEC感染症患者の約6〜15%、出血性大腸炎患者の10〜30%に溶血性尿毒症症候群(HUS)が出現する。消化器症状の出現後5〜14日(平均7日前後)が多い。溶血性貧血、血小板減少、腎不全を三徴とする。 HUSの10〜30%に脳症が合併し、頭痛、幻視、意識障害、けいれんがみられる。致死率は2〜5%と高く、EHEC感染症の死因の多くが脳症である。HUS発症前や回復期にみられることもあるので注意が必要である。無尿、意識障害がみられる場合は血液透析を行う。 |
■検査 |
腸炎:便培養による大腸菌の検出と志賀(ベロ)毒素の同定 志賀(ベロ)毒素:イムノクロマト法、EIA法、PCR法 O157,26でなくても症状から疑われる場合は毒素産生の確認が必要である HUSで、菌分離がない場合は、便中の毒素の検出、O抗原凝集抗体または志賀(ベロ)毒素抗体を行う。 |
■届出 |
EHECを検出した場合は、保菌者を含めてただちに保健所に届ける(届出票)。HUSでは、便培養または血清学的検査によりEHEC感染症によると判断されれば届出を行う。 院内ではじめて検出された場合は、検査部はICTと主治医に報告し、感染制御部は病院長にただちに連絡する。 |
■伝播と感染の防止 |
1. 感染・保菌患者の個別(個室)隔離もしくはコホーティング。個室はトイレがある部屋を用いる。 2. 接触予防策の正しい実施 3. 処置ごとの手指衛生の励行(流水と石ケンまたはアルコール手指消毒剤) 4. おむつを扱うときは手袋、エプロンを着用 5. 医療器具の専用化とアルコールによる消毒 6. トイレのドアノブやベッド柵など手が触れる部分の清拭・消毒(アルコール環境クロス) 7. 便で汚れたシーツ等は、感染性リネンとして取り扱う。 |
■院内における接触予防策解除基準 |
症状が改善し、(抗菌薬投与されている場合は投与終了後)24時間以上の間隔を置いた連続2回の検便で陰性が確認された場合接触予防策を解除する。症状が改善した場合、退院は可とする。 厚生労働省 「保育所の感染対策ガイドライン2018改訂版」では保育所への登園の目安として、「医師により感染のおそれがないと認められていること」とし、「無症状病原体保有者の場合、トイレでの排泄習慣が確立している5歳児以上の小児については出席停止の必要はなく、また5歳児未満の子どもについては、2回以上連続で便から菌が検出されなければ登園可能である」と記載されている。 |