B.2. 肺炎

1.    肺炎の定義

肺炎は「肺実質の,急性の,感染症の,炎症」と定義することができ,発症頻度,生命予後,生活の質(QOL),社会に与える影響などの点で最も重要な感染症のひとつである.

 

2.    肺炎の臨床的特徴

肺炎は発症の場や病態の観点からは,市中肺炎(community-acquired pneumonia : CAP),入院48時間以降に発症する院内肺炎(Hospital-acquired pneumonia : HAP),医療や介護を受けている人に発症する医療・介護関連肺炎(Nursing and healthcare-associated pneumonia : NHCAP)に大別することができる.一般的に,CAP患者は基礎疾患を有しておらず(または有しても軽微であり),耐性菌が原因菌となる頻度も少ない.NHCAPは主に医療ケアや介護を受ける高齢者に発症する肺炎であり,繰り返す誤嚥性肺炎に代表される予後不良の終末期肺炎の像を呈する例も多い.HAPは入院後48時間以上経過してから新しく発症した肺炎と定義され,入院時すでに感染していたものは除かれる.

B.2.1 市中肺炎(community-acquired pneumonia : CAP

1.   定義

 市中肺炎は、病院外で日常生活を営んでいた基礎疾患を有しない、あるいは有しても軽微な基礎疾患の人に起こる肺炎である。

 市中肺炎が院内肺炎や医療・介護関連肺炎と大きく異なる点は、原因微生物の違いで、市中肺炎では非定型病原体(肺炎マイコプラズマ、クラミジア属、レジオネラ・ニューモフィラ、コクシエラ属)を考慮する必要がある。

 

2.   起炎菌について

 市中肺炎の起炎菌では、細菌性肺炎の起炎菌である肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌が多く、その次に、非定型肺炎の起炎菌である肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマが頻度として多い。それ以降は、緑膿菌、モラクセラ・カタラーリス、大腸菌、レジオネラ・ニューモフィラの順となっている。

 

3.   重症度分類

 敗血症の有無の評価と、市中肺炎の重症度評価はA-DROPシステムによる評価が推奨される(表1)。A-DROPシステムを用いて重症度分類を行い、重症以上は入院治療が望ましい(表2)。

 

表1 A-DROPシステム

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AAge):男性70歳以上、女性75歳以上

DDehydration):BUN 21mg/dL以上または脱水あり

RRespiration):SpO2 90%以上(PaO2 60torr以下)

OOrientation):意識変容あり

PBlood Pressure):血圧(収縮期)90mmHg以下

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軽症:上記5つの項目のいずれも満たさないもの。

中等症:上記項目の1つまたは2つを有するもの。

重症:上記項目の3つを有するもの。

超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。

ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。

 

表2 重症度分類と治療の場の関係

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軽症−外来治療

中等症−外来または入院

重症−入院治療

超重症−ICU入院

 

4.   市中肺炎の診断と病原体検査法

 市中肺炎の診断では、自他覚症状として咳、痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの局所症状や発熱や倦怠感などの全身症状の有無を確認する。ただし、高齢者の場合は、これらの呼吸器症状を示さず、食欲低下などの呼吸器以外の症状が前面に出る場合があるため注意が必要である。肺炎の確定診断は、胸部X線および胸部CTなどの画像診断によって行われる。市中肺炎では、院内肺炎や医療・介護関連肺炎と異なり、細菌性肺炎だけでなく、非定型肺炎も考慮する必要がある。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別は表3を用いて行い、その結果を基に治療を行う。表3の6項目中4項目以上合致した場合は非定型肺炎が疑われ、6項目中3項目以下の合致であれば細菌性肺炎が疑われる。

 市中肺炎の病原体として、一般細菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア属、レジオネラ・ニューモフィラ、ウイルスなどが挙げられる。原因微生物を特定し抗菌薬を選択する必要があるが、実臨床では、外来初診時に市中肺炎の原因微生物が判明するケースはまれであり、通常はエンピリックに治療が開始されることが多い。ただし、エンピリック治療を行う場合でも、最初の治療が成功するとは限らないため原因微生物検索のための検査を的確に実施する。病原体の種類によって適切な検査法が異なるため、臨床症状や画像所見から原因微生物をある程度推定し検査を選択する必要がある(表4)。

(1) グラム染色

 グラム染色は迅速性に優れ市中肺炎の診断において有用性が高い。培養結果を基準とした場合、喀痰のグラム染色の感度は良質な検体を用いた場合、6070%程度とする報告が多い。喀痰の品質としては、Miller &Jones分類はP2以上、Geckler分類は45が望ましい。

(2) 培養・同定

 実際に菌を分離して同定することで原因菌の診断が可能となり、薬剤感受性試験を実施することで、各薬剤への感受性を評価し耐性の有無を確認することができる。

(3) 血液培養

 血液培養は真の原因菌の決定に有用な検査であるが、検出率は低く、陽性率は10%程度と考えられている。

(4) 抗原検出

 市中肺炎を対象とした抗原検出は、肺炎球菌、レジオネラ・ニューモフィラ、肺炎マイコプラズマ、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスなどが可能である。肺炎球菌とレジオネラ・ニューモフィラを対象とした尿中抗原は、肺炎発症後数ヶ月にわたって遷延して検出されることがあり、肺炎を繰り返し発症している症例では、既感染による偽陽性の可能性がある。レジオネラ・ニューモフィラ血清型1以外の血清型の菌は感度が低く、偽陰性となる可能性がある。

(5) 遺伝子検査

 肺炎マイコプラズマやレジオネラ・ニューモフィラはLAMP法を用いた遺伝子検査がある。

(6) 血清診断

 通常、感染初期と2週間後のペア血清を用いて、抗体価が4倍以上上昇していれば陽性と判断される。肺炎クラミジア感染症は抗クラミドフィラ・ニューモニエ抗体の測定により診断される場合が多い。既感染者やクラミジア・トラコマチスやオウム病クラミジアなどとの交差反応による偽陽性の問題がある。

 

表3 市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別項目

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1、年齢60歳未満

2、基礎疾患がない、あるいは軽微

3、頑固な咳がある

4、胸部聴診上所見が乏しい

5、痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない

6、末梢血白血球数が10,000/μL未満である

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

表4 呼吸器感染症の病原体別にみた検査の適応

 

塗抹・染色

培養・同定

抗原

検出

血清

抗体価

一般細菌

×

肺炎マイコプラズマ

×

肺炎クラミジア

×

×

×

レジオネラ・

ニューモフィラ

(血清型1)

 

インフルエンザ

ウイルス

×

×

×

 

 

5. 治療

(1) 市中肺炎のエンピリック治療抗菌薬

 市中肺炎の治療で重要な原因菌は、頻度が高く重症化しやすい肺炎球菌、次いでインフルエンザ菌である。若年者の場合は肺炎マイコプラズマの頻度が比較的高く、軽症例が多い。慢性心疾患など基礎疾患保有患者においては肺炎球菌、インフルエンザ菌に次いでモラクセラ・カタラーリスを考慮する。高齢者では口腔内レンサ球菌や嫌気性菌の関与率が高い。

A)  外来患者群(軽症〜中等症肺炎)

細菌性肺炎が疑われる場合には、ペニシリン系薬を、非定型肺炎が疑われる場合にはマクロライド系薬を選択する。慢性の呼吸器疾患がある場合はレスピラトリーキノロンを第1選択とするが、結核に対する抗菌力を有しており、使用に際しては結核の有無を慎重に判断する。

内服薬

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 11 13

AMPC(ビクシリン) 経口(250mg) 11 13

AZM(アジスロマイシン)徐放製剤経口12g・単回投与

CAM(クラリスロマイシン) 1200mg12

 

注射薬

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1 500mg  11

 

B)  一般病棟入院患者群(中等症〜重症肺炎)

 入院が必要な患者に対しては初期に静注薬で開始し、可能ならば早期に内服薬へスイッチする。

注射薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

CTX(クラフォラン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

 

  非定型肺炎が疑われる場合

MINO(ミノサイクリン) 点滴静注 1100mg 12

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1 500mg  11

 

C)  集中治療室入室患者群(重症〜超重症肺炎)

 集中治療室で全身管理が必要となる重症肺炎の代表的な劇症化原因菌は肺炎球菌とレジオネラ・ニューモフィラで、そのほか緑膿菌を含むグラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌、オウム病クラミジア、インフルエンザウイルスなどがある。

注射薬

A法:

TAZ/PIPC(タゾピペ) 点滴静注 14.5g 134

IPM/CS(チエナム) 点滴静注 1 0.51g 124(添付文書最大2g/)

MEPM(メロペネム) 点滴静注 11g 123

BIPM(オメガシン) 点滴静注 1 0.30.6g 134(添付文書最大1.2g/)

DRPM(フィニバックス) 点滴静注 1 0.51g 13

 

B法:

※緑膿菌を考慮しない場合

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

CTX(クラフォラン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

 

C法:

A or B法+AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1 500mg  11

 

D法:

A or B法+LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

A or B法+CPFX(シプロキサン) 点滴静注 1 300mg 12

A or B法+PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

 

E法:

A or B or C or D法+VCM(バンコマイシン) 点滴静注 11g(または15mg/kg) 12

A or B or C or D法+TEIC(テイコプラニン) 点滴静注 2日間1400mg 12回ローディング、3日目以降1400mg 11(添付文書最大 800mg 初日、以降400mg/)

A or B or C or D法+LZD(ザイボックス) 点滴静注 1600mg 12

 

(2) スイッチ療法の目安

 静注抗菌薬の投与により肺炎患者の状態が改善し、@循環動態が安定し、A臨床症状が改善し、B経口摂取が可能、C消化器機能が健全であれば、内服抗菌薬へのスイッチが可能とされる。スイッチ療法の基準として、@呼吸器症状(咳、呼吸困難、など)の改善、ACRP<15mg/dL、B経口摂取の十分な改善、C体温が少なくとも12時間以上38℃未満であること、の4項目を満たせば安全に実施できると報告されている。

 

(3) 治療期間の目安

 市中肺炎の治療期間は、軽症から中等症で初期治療が奏功している場合には1週間以内(57日間)が、重症例や、劇症化・難治化を来たしうるレジオネラ・ニューモフィラやMRSA、緑膿菌などが原因菌の場合や、肺外にも感染が広がっている場合には714日間(以上)が基本である(表5)。

 

表5 市中肺炎における治療期間の目安

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・肺炎球菌:菌血症がなければ解熱後3(〜5)日間(最低5日間)、菌血症併発では1014日間

・ブドウ球菌や嫌気性菌による壊死性肺炎:14日間以上

・レジオネラ・ニューモフィラ:714日間

・緑膿菌:1014日間

・その他のCAP:最低5日間かつ23日間平熱が続くこと

・肺化膿症、胸膜炎、膿胸を併発している場合、基礎疾患による難治化を認める場合には、抗菌薬を上記より長期間投与するべきである

 

B.2.2 医療・介護関連肺炎(Nursing and healthcare-associated pneumonia : NHCAP

医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎であり、以下の定義項目を1つ以上満たす。

 

NHCAPの定義

1.    療養病床・精神病床に入院している、もしくは介護施設に入所している

2.    90日以内に病院を退院した

3.    介護(PS3:限られた自分の身の回りのことしかできない・日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす、を目安とする)を必要とする高齢者・身体障碍者

4.    通院で継続的に血管内治療(透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬等)を受けている。

 

NHCAPについてはCAPで標的にされない耐性菌(MRSA, 緑膿菌)が約20%以上に分離されるが、院内肺炎(HAP)程は多くなく、肺炎球菌・ヘモフィルス属・MSSAなどCAPに多くみられる菌に加え、口腔内レンサ球菌・腸内細菌(クレブシエラ属など)や嫌気性菌の頻度が増していることも報告されている。

 

 NHCAPは誤嚥性肺炎とオーバーラップすると考えられ、原因菌の評価や細菌学的効果判定が困難なことも多い。予後不良の終末期肺炎の像を呈する例や老衰の経過で発症する例も多く、適切な抗菌薬治療が生命予後を改善するとは限らないことにも留意しておく必要がある。

 NHCAPの重症度はA-DROPで判定し後述の院内肺炎(HAP)の耐性菌リスクを評価し、HAPのエンピリック治療で治療抗菌薬を判断する。本人・家族の意志が延命や状態を強く望むことにあったときには抗菌薬使用はescalationあるいはde-escalation戦略も選択肢に上がってよい。繰り返す誤嚥性肺炎によってADLが徐々に低下し、終末期肺炎の像を呈する場合には耐性菌を想定した治療選択は必要ないという見解もある。一方、経管栄養管理症例・院内で起きた誤嚥性肺炎・腸内細菌科細菌の関与が考えられる場合は耐性菌リスクを考慮しde-escalation治療を考慮する。

 

B.2.3 院内肺炎(Hospital-acquired pneumonia : HAP

1.    院内肺炎の臨床的特徴

HAPは高度医療の結果としての免疫抑制下の患者に生じることが多い.院内環境に生息する細菌に暴露されることが多いうえ,抗菌薬の既投与があるために病院感染で認められる薬剤耐性菌による肺炎の形を取ることが多い.人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia : VAP)は気管挿管・人工呼吸開始後48時間以降に新たに発症した肺炎であり,HAPの中でもより重症度の高い患者群に生じることから,その治療にはとりわけ難渋する.日本における肺炎群別の死亡率についてのシステマティックレビューによれば,肺炎の死亡率はそれぞれCAP6.3%NHCAP15.5%HAP30.4%VAP32.4%との結果であった.

HAP患者における検出菌は,CAPと異なり耐性菌が多い傾向がある.日本におけるHAPの疫学研究の既報告を対象とした統合解析によれば,黄色ブドウ球菌が最も頻度が高く,内訳はMRSA17.5%,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive S.aureus : MSSA6.5%であった.次いで緑膿菌が13.9%と多く,以上の2菌種が主要検出菌であった.

 

2.    院内肺炎診療の流れ

院内肺炎の診断では問診,身体所見,血液検査所見,胸部X線写真より総合的に判断する.問診では外装,喀痰,呼吸困難といった呼吸器症状と,発熱,倦怠感,食思不振といった全身症状,診察所見では胸部聴診でのcracklesや,発熱,頻脈,頻呼吸を認めた場合などに肺炎を疑い胸部X線検査,血液検査を施行する.典型的な細菌性肺炎では胸部X線検査では気管支透亮像を伴う浸潤影を認め,血液検査所見で好中球優位の白血球数増加,炎症反応(CRP上昇・血沈亢進)を認めることがある.肺炎の診断においては,炎症の場が肺実質(肺胞領域)であるか,経過は急性であるか,微生物によって引き起こされた炎症であるかを判断し,薬剤性肺炎などの非感染性肺炎やうっ血性心不全などとの鑑別が重要である.

3.    院内肺炎の治療

HAPにおける抗菌薬による治療戦略は大きく2つに分けられる.狭域の薬剤を使用し,全身状態の改善がみられない場合に必要に応じて広域の薬剤への以降を考慮するescalation治療と,広域の薬剤で初期治療を開始し,全身状態の改善を確認し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮するde-escalation治療である.de-escalation治療の適応となるのは敗血症,重症,または耐性菌リスクが高い患者であり,これらに該当しない場合はescalation治療を選択する.成人肺炎診療ガイドライン2017においては,HAPの診療ではI-ROADによる重症度評価を行うことが推奨されている(図1).敗血症の状態,重症度が高い場合,具体的にはIROADで中等症(B群)以上のHAPの場合,または耐性菌のリスクがある場合には,de-escalation治療を行う.ただし,重症度にかかわらず,de-escalation治療が不可欠な病態も存在することを考慮しておく必要がある.すなわちHAPは宿主のADLや基礎疾患・免疫能低下が背景にあることが多く,感染防御能は千差万別である.また必ずしもI-ROAD による重症度に応じて予後が不良になるとは限らず,重症度が高ければ耐性菌の分離頻度が増すということもない.つまり好中球が1,000/μL未満や後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome : AIDS)発症時や免疫抑制剤使用時の極端な細胞性免疫低下状態ではde-escalation治療を行わざるを得ない場合があり,さらには気管挿管下に人工呼吸器管理が施行されていれば誤嚥および耐性菌の可能性も多いため,治療線略としてはde-escalation治療が選択されやすいと言える.逆に,よくコントロールされた糖尿病や軽度COPDなどでは必ずしもde-escalation治療が必要ではない.

 

1. HAPの重症度分類

 

 

A.    耐性菌リスクの評価

HAPについては,分離菌により大きく治療選択が左右されるため,血液・喀痰培養,時には気管吸引液やBAL液を含む各種培養検査,迅速尿中抗原検査,病原体に対するペア血清での抗体検査などで極力,病態に関与する菌を明らかにする努力をすべきである.

成人肺炎診療ガイドラインでは,耐性菌のリスク評価について,1. 過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴,2. 過去90日以内に2日以上の入院歴,3. 免疫抑制状態,4. 活動性の低下:PS 3,バーゼル指数 < 50,歩行不能,経管栄養または中心静脈栄養法の2項目以上で耐性菌の高リスク群としている.バーゼル指数とは,食事,移動,整容,トイレ動作,入浴,歩行,階段昇降,着替え,排便,排尿について各々015点で評価し,ADLをスコアリングする.

耐性菌リスクなしにおける主な検出菌:肺炎球菌・MSSA・グラム陰性腸内細菌科細菌(クレブシエラ属・大腸菌など)・インフルエンザ菌・口腔内レンサ球菌

耐性菌リスクありにおける主な検出菌:上記に加え、MRSA・緑膿菌・ESBL産生菌・AmpC型β-ラクタマーゼ産生菌

 

B.    HAPのエンピリック治療

抗菌薬治療は一般的にエンピリック治療と標的治療に区別される.エンピリック治療は本来,培養結果が判明するまでの初期数日間の治療,標的治療は分離菌に対応した治療,という意味合いで用いられる.しかし実臨床では培養検査で原因菌が判明しない場合が多く,初期治療自体をガイドラインの推奨レジメンに準拠した初期の広域治療(empirical broad spectrum antibiotic treatment)と,個別の情報や迅速検査法結果等をもとに標的をある程度絞った初期治療(pathogen directed antibiotic treatment)に区別して分析が行われる場合もある.特にHAPにおいては全身状態が悪く,高齢である場合も多いため,喀痰の排出が困難で,かつ侵襲的検査ができない症例が多い,したがってHAPではエンピリック治療が重要となる.HAP患者では高齢者や免疫能が低下した患者が多く,結核を発症するリスクが高い患者層であるため,結核感染の有無については十分に注意を払い,結核に対する抗菌活性を有するニューキノロン系薬の使用は慎重に行う.

a.    escalation治療

HAPではCAPと比較して耐性菌リスクが高いものの,全例で耐性菌を標的とした広域抗菌薬を投与する必要はなく,耐性菌リスク,肺炎の重症度などからその適応を判断する.ガイドラインでは,易反復性の誤嚥性肺炎のリスクや疾患終末期や老衰の状態でない場合,次のステップとして前述のIROADのフローチャートなどで重症度と耐性菌リスクを判断するよう記載されている.軽症群のHAPで,かつ耐性菌リスクが低い場合,escalation治療(まず狭域スペクトラムの抗菌薬を投与し,向こうの場合に広域スペクトラムの抗菌薬にescalationさせる)による初期治療が推奨される.escalation治療で標的とするのは肺炎球菌,MSSA,インフルエンザ菌,口腔内レンサ球菌,クレブシエラ属(非ESBL産生菌),モラクセラ属などの菌である.これらの菌に対するエンピリック治療として推奨されるのは,ペニシリン系薬ではスルバクタム・アンピシリン,セフェム系薬では第三世代のセフトリアキソンまたはセフォタキシム,否定形肺炎の可能性がある場合や,β-ラクタム系薬のアレルギー歴を有する場合にはニューキノロン系薬のレボフロキサシンが推奨される.外来治療が可能な場合は,内服薬で細菌性,非定型肺炎の両者をカバーするようにβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(アモキシシリン・クラブラン酸またはスルタミシリン),セフトリアキソンにマクロライド系薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)を併用するか,レスピラトリーキノロン(ガレノキサシン,モキシフロキサシン,レボフロキサシン,シタフロキサシン,トスフロキサシン)を選択する.外来で注射薬による治療を行う場合には11回投与が可能なセフトリアキソンやレボフロキサシンを選択する.レボフロキサシンは嫌気性菌への抗菌活性が不十分であるため,誤嚥性肺炎や肺膿瘍,肺化膿症と行った嫌気性菌感染の可能性が高いとされる病態では,クリンダマイシンやメトロニダゾールの併用を検討する.鹿児島大学病院感染対策マニュアルに,代表的なグラム陽性球菌,グラム陰性桿菌について院内のアンチバイオグラムが掲載されているので,積極的に活用されたい.

b.    de-escalation治療

HAPと診断され,敗血症,中等症以上の重症度,または耐性菌のリスクが高いと判断された群に対してはde-escalation治療(広域の薬剤で初期治療を開始し,可能であれば狭域の薬剤への変更を考慮する治療)を選択する.この群の初期治療としてはescalation治療群の原因微生物に加え,耐性菌(MRSA,緑膿菌,ESBL産生腸内細菌など)をカバーする必要がある.

重症度が高いと判断される,または耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation単剤治療が推奨される.抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ-ラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬,ニューキノロン系薬の単剤投与が推奨される.

重症度が高いと判断される,かつ耐性菌のリスクが高い群に対してはde-escalation多剤治療が推奨される.抗菌薬は緑膿菌に抗菌活性を有するβ-ラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬,第四世代セフェム系薬,カルバペネム系薬をベースに,ニューキノロン系薬またはアミノグリコシド系薬を併用する.我が国のHAPに占める非定型病原体(肺炎マイコプラズマ,クラミジア属,レジオネラ・ニューモフィラ)の頻度は低い他,発生した環境,画像所見などから非定型病原体の関与が疑われる際にはニューキノロン系薬を選択する.また,MRSAが分離された既往がある場合,または,過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴がある場合はMRSA感染のリスクが高いと判断され,抗MRSA薬を併用する.抗菌薬の有効性は4872時間後に臨床症状,血液データ,画像所見などから総合的に判定する.初期治療は想定される原因微生物をカバーするために広域な抗菌薬を併用するが,漫然と使用することは耐性菌の産生,医療費の高騰の原因となる.また抗菌薬の副作用によりかえって予後不良となるとの報告もあり,原因微生物が判明した時点でより狭域な標的治療に切り替える(de-escalation治療).抗菌薬ごとの投与量は,年齢,腎機能によって調整する.

c.     HAPの抗菌薬投与期間

抗菌薬の投与期間については,短期間抗菌薬治療(8日以内)と長期間治療(1015日)を比較したメタアナラリシスの結果では,生命予後,初期治療効果,入院期間,再燃のいずれのアウトカムに対しても有意差は示されなかった.成人肺炎診療ガイドラインによれば,抗菌薬の投与期間は1週間以内の比較的短期間の治療期間が提案されている.黄色ブドウ球菌,クレブシエラ属,嫌気性菌などにより膿瘍性病変がある場合は2週間以上の長期投与が必要である.

 

2. HAPのエンピリック治療抗菌薬

 

d.    抗菌薬無効時の考え方

肺炎の初期治療への反応が不良と判断された場合には,病態の見直しと治療方針の再検討が,場合によっては検査を追加して情報の収集が必要となる.現場では抗菌薬の変更がまず検討されることが多いが,初期治療への反応不良には他にも様々な因子が関与しうるため,感染性因子だけでなく非感染性の因子にも注目して初期判断の妥当性を見直してみることが必要である.初期治療不応時の鑑別診断の感染性の病態と非感染性の病態の例を表に示す.

 

C.    人工呼吸器関連肺炎

a.    臨床的・疫学的特徴

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia : VAP)は,気管挿管下人工呼吸を開始して48時間以降に新たに発生するHAPを指す.VAP発症のリスク因子は長期人工呼吸管理,再挿管,発症前の抗菌薬投与,原疾患(熱傷,外傷,中枢神経疾患,呼吸器疾患,心疾患),顕性あるいは不顕性誤嚥,仰臥位などである.その他VAP発症には逆流,誤嚥,定着(コロニゼーション)が関与する.胃内容物の逆流,口腔内や気管チューブへの病原微生物の定着,気管チューブのカフ外側を介した声門下の分泌物の誤嚥,人工呼吸に関連した咳反射や線毛上皮機能低下などが挙げられる.

ICUにおける主要な感染性合併症であり,報告により異なるが,全挿管患者の927%に発生するとされる.HAPであるため,検出菌として緑膿菌が最も多く,その他エンテロバクター属やステノトロフォモナス属などの治療難渋性グラム陰性桿菌群,MRSAなど黄色ブドウ球菌の割合が多い.

b.    診断

臨床的に@全身性炎症反応:発熱,CRPやカルシトニンなどの上昇,A酸素化の低下,B画像検査(胸部X線,CT,エコー)上異常陰影の出現と持続,C膿性気道分泌物があった場合などに臨床的VAPとして微生物学的検索を行う.ただし,VAPは人工呼吸中に生じる肺炎であるために,原疾患や人工呼吸の原因となった肺病変,あるいは肺炎以外の人工呼吸中に併発しやすい肺病変(無気肺,胸水など)との鑑別はしばしば困難であり,注意を要する.

VAPは挿管中であり,他の肺炎と異なり病巣へのアクセスが容易な特徴を持つ.従って積極的に微生物診断を行うことが可能であり重要である.以下の場合,微生物学的診断の目安とする.なお,定量培養は必須ではない.

@    下気道の直接吸引(tracheal aspirate)で病原微生物が培養され,判定量培養3+以上あるいは定量培養106CFU/mL以上

A    気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage : BAL,あるいはmini-BAL(気管支鏡ではなく,サンプリングカテーテルにて施行可能)で病原微生物が培養され,半定量培養2+以上あるいは定量培養106CFU/mL以上

B    血液培養あるいは胸水培養が陽性で,下気道からの検出微生物と一致

c.     治療

VAPは致死率の高い病態であり,これに対して適切な経験的抗菌薬が投与されたか否かが死亡率に影響する.VAPHAPの一病態であり,抗菌薬選択はHAPのそれに沿う.抗菌薬選択においては,グラム陰性桿菌群カバーを前提とし,特に長期の入院や抗菌薬治療のある患者では上述の治療難渋性グラム陰性桿菌群の可能性も考慮する.MRSAの感染歴や保菌,MRSAに無効な抗菌薬の使用歴,下気道検体でのグラム染色でグラム陽性球菌クラスターが検出される場合には,抗MRSA薬併用の必要性を検討する.耐性菌の発現を宰相とするためにも,培養結果判明後は可及的狭域への抗菌薬へ変更したり,感染症が否定的であれば中止する(de-escalation).

d.    予防

VAP予防策として確立したものはないが,下記の予防策のいくつをまとめて運用するバンドルアプローチが勧められている.

@    手指衛生

A    仰臥位の回避

B    人工呼吸器回路の頻回の交換の回避

C    可能な鎮静を避ける

D    人工呼吸からの離脱を促進する

E    声門下腔吸引孔付きチューブ

F    口腔ケア

 

D.   個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア

細菌性肺炎は一般に抗菌薬によって病因根治的な治療が可能であり,治癒すれば大きな後遺症を残すことなく病前の状態に復帰する良性疾患である.一方,不可逆的な死の過程,すなわち癌などの疾患末期状態や老衰の過程にある人に起こった肺炎は,死亡の契機となったり,病状が改善したとしても病前の状態に復帰できず,むしろ堪え難い苦痛や不快感が持続する,あるいは繰り返す可能性がある.このような患者に対しては,近年学会の指針などで終末期における医療の決定プロセスについて,適切な情報の提供と説明に基づく個人の意思の孫亮が示されるようになってきた.

最善の治療を行っても死が避けられない,あるいはわずかに延命できたとしても本人の価値観に照らして「良い日々だった」と言えるQOLが保持できないと,専門知識を有する複数の医師によって一致して判断される患者に起こった肺炎では,人工呼吸器による管理や広域抗菌薬を用いた強力な治療ではなく,苦しみをとる緩和医療を優先して行う選択肢もあることを提示し,本人の意思を確認し,本人の意思確認ができない場合には,本人の意思をよく知る家族による推定意思を尊重し,その意思に沿って肺炎治療の開始,不開始,選択する抗菌薬の種類を多職種によって構成された医療チームとして決定する.

診断結果とそれに基づく診療方針はその過程を含めて診療録に記録する.この場合でも,肺炎に伴う不快や苦痛を取り除く緩和的な治療は積極的に優先して行うべきである.さらに一度決定した診療方針も,本人の希望がある時には状況に応じていつでも変更できることを説明する.

B.2.4 原因菌判明時の抗菌薬選択

 喀痰を用いた細菌学検査および血液培養検査、尿中抗原検査(肺炎球菌、レジオネラ・ニューモフィラ)、鼻咽頭ぬぐい検体抗原検査(肺炎マイコプラズマ、インフルエンザ)、喀痰抗原検査(肺炎球菌)、血清IgM抗体検出法(肺炎クラミジア)等による原因菌同定法に基づき、原因菌が確定された場合には、標的治療へのde-escalationを行う。

A)  肺炎球菌

 ペニシリン耐性肺炎球菌の頻度は低いが、その場合はレスピレトリーキノロンを第一選択とする。

外来治療の場合(内服薬)

第1選択薬

AMPC(ユナシン) 経口(250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第2選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第1選択薬

ABPC(ビクシリン) 点滴静注 112g 134

PCG(ペニシリン) 点滴静注 1200300万単位 14

2選択薬

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

第3選択薬

CZOP(ファーストシン) 点滴静注 112g 124

CFPM(マキシピーム) 点滴静注 112g 14

第4選択薬

PAPM/BP(カルベニン) 点滴静注 10.51g 124(添付文書最大2g/)

MEPM(メロペネム) 点滴静注 11g 123

DRPM(フェニバックス) 点滴静注 1 0.51g 13

BIPM(オメガシン) 点滴静注 1 0.30.6g 134(添付文書最大1.2g/)

IPM/CS(チエナム) 点滴静注 1 0.51g 124(添付文書最大2g/)

 

B) インフルエンザ菌

 インフルエンザ菌全体に占めるβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-negative, ampicillin-resistant H. influenzae : BLNAR)18.7%、β-ラクタマーゼ産生アモキシシリン・クラブラン酸耐性インフルエンザ菌(β-lactamase-positive amoxicillin/clavulanate resistant H. influenzae : BLPACR)5.7%であるが、今後耐性率の変動が予想される。BLNARは第一世代セフェム系薬、第二世代セフェム系薬に耐性である。ピペラシリンはBLNARに抗菌力を示すが、BLPACRには無効である。タゾバクタム・ピペラシリンは両者に有効である。BLNARにはレスピラトリーキノロンを第一選択とする。

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第二選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

第二選択薬

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

CTX(クラフォラン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

TAZ/PIPC(ゾシン・タゾピペ) 点滴静注 14.5g 134

第三選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロキサン) 点滴静注 1 300mg 12

PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

 

C) クレブシエラ属、他の腸内細菌科

 Extended spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の比率は増加傾向であり、呼吸器検体由来クレブシエラのうち、ESBLの割合は1.3%である。ESBL産生株の多くはキノロン耐性を同時に有している。

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第二選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

CTM(セフォチアム) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

CTX(クラフォラン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

第二選択薬

TAZ/PIPC(ゾシン・タゾピペ) 点滴静注 14.5g 134

第三選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロキサン) 点滴静注 1 300mg 12

PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

 

D)  肺炎マイコプラズマ

 マクロライド感性マイコプラズマ感染症で外来治療を行う場合は、マクロライド系を第一選択とする。マクロライド系薬投与後、4872時間で解熱しない場合は、マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎を疑い、内服薬、注射薬ともにミノサイクリンを投与する。

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

CAM(クラリス) 経口 1200mg 12

AZM(ジスロマック) 徐放製剤経口 12g 単回投与

第二選択薬

MINO(ミノマイシン) 経口1100mg 12

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

MINO(ミノマイシン) 点滴静注 1100mg 12

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1500mg 11

第二選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロキサン) 点滴静注 1 300mg 12

 

E)   レジオネラ・ニューモフィラ

 重症肺炎ではニューキノロン系薬とアジスロマイシンの併用効果を示す報告がある。

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロキサン) 点滴静注 1 300mg 12

PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1500mg 11

 

F)  クラミジア属

 細胞内移行が良好で、かつ強いクラミジア増殖抑制を示す薬剤には、テトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、ニューキノロン系薬などがある。

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

MINO(ミノマイシン) 経口1100mg 12

第二選択薬

CAM(クラリス) 経口 1200mg 12

AZM(アジスロマイシン) 徐放製剤経口 12g 単回投与

第三選択薬

MINO(ミノマイシン) 経口1100mg 12

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

MINO(ミノマイシン) 点滴静注 1100mg 12

第二選択薬

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1500mg 11

第三選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

 

G)  メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)

MSSA感染症(菌血症)の場合にはセファゾリンのほうがバンコマイシンよりも臨床効果が高い。

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第二選択薬

CAM(クラリス) 経口 1200mg 12

AZM(アジスロマイシン) 徐放製剤経口 12g 単回投与

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

CEZ(セファゾリン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大5g/)

第二選択薬

MINO(ミノマイシン) 点滴静注 1100mg 12

CLDM(クリンダマイシン) 点滴静注 1600mg 124

 

H)  メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

LZD(ザイボックス) 経口 1600mg 12

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

VCM(バンコマイシン) 点滴静注 11g(または15mg/kg) 12

TEIC(テイコプラニン) 点滴静注 2日間1400mg 12回ローディング、3日目以降1400mg 11(添付文書最大 800mg 初日、以降400mg/)

LZD(ザイボックス) 点滴静注 1600mg 12

 

I)   レンサ球菌

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

AMPC(ビクシリン) 経口(250mg) 12 134(添付文書最大4/)

AZM(アジスロマイシン) 徐放製剤経口 12g 単回投与

第二選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第三選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

ABPC(ビクシリン) 点滴静注 112g 134

PCG(ペニシリン) 点滴静注 1200300万単位 14

AZM(アジスロマイシン) 点滴静注 1500mg 11

第二選択薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

TAZ/PIPC(ゾシン・タゾピペ) 点滴静注 14.5g 134

 

J)   モラクセラ・カタラーリス

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第二選択薬

CAM(クラリス) 経口 1200mg 12

AZM(アジスロマイシン) 徐放製剤経口 12g 単回投与

第三選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

第二選択薬

CTM(セフォチアム) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

CTRX(セフトリアキソン) 点滴静注 12g 11回または11g 12

CTX(クラフォラン) 点滴静注 112g 123(添付文書最大4g/)

第三選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロフロキサシン) 点滴静注 1 300mg 12

PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

 

K)  嫌気性菌

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

SBTPC(ユナシン) 経口(375mg) 12 134(添付文書最大3/)

CVA/AMPC(オーグメンチン) 経口(125mg/250mg) 12 134(添付文書最大4/)

第二選択薬

GRNX(ジェニナック) 経口1400mg 11

MFLX(アベロックス) 経口1400mg 11

STFX(不採用) 経口1100mg 112

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

SBT/ABPC(ユナシン・スルバシリン) 点滴静注 13g 134

第二選択薬

MNZ(アネメトロ) 点滴静注 1 500mg 134

CLDM(クリンダマイシン) 点滴静注 1 600mg 124

 

L)  緑膿菌

外来治療の場合(内服薬)

第一選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 経口1500mg 11

STFX(不採用) 経口1100mg 112

CPFX(シプロフロキサシン) 経口 1 200mg 13

入院治療の場合(注射薬)

第一選択薬

PIPC(ペントシリン) 点滴静注 124g 14(添付文書最大8g/)

TAZ/PIPC(ゾシン・タゾピペ) 点滴静注 14.5g 134

第二選択薬

CAZ(セフタタジム) 点滴静注 112g 14(添付文書最大4g/)

CZOP(ファーストシン) 点滴静注 112g 124

CFPM(マキシピーム) 点滴静注 112g 14

第三選択薬

LVFX(レボフロキサシン) 点滴静注 1 500mg 11

CPFX(シプロフロキサシン) 点滴静注 1 300mg 12

PZFX(パズクロス) 点滴静注 1 5001000mg 12

第四選択薬

MEPM(メロペネム) 点滴静注 11g 123

DRPM(フェニバックス) 点滴静注 1 0.51g 13

BIPM(オメガシン) 点滴静注 1 0.30.6g 134(添付文書最大1.2g/)

 

参考文献

・日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2017

・日本感染症学会・日本化学療法学会 感染症治療ガイド2014

・日本化学療法学会・日本感染症学会 MRSA感染症の治療ガイドライン(20136月発行)