B.5感染性心内膜炎 Infective Endocarditis |
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B.5.1 感染性心内膜炎 Infective Endocarditis |
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感染性心内膜炎は不明熱の代表疾患であり、診断が困難なことも少なくない。また多彩かつ重篤な合併症を併発し、長期間の治療が必要となる。 診断については、Duke診断基準(表1)が用いられる。心雑音がほとんどの症例で聴取されるため、新たに出現した弁逆流性心雑音は、感染性心内膜炎を疑う所見として重要である。また、末梢血管病変としてJaneway病変(手掌と足底の無痛性小赤色斑径)、Osler結節(指頭部にみられる赤色〜紫色の有痛性皮下結節)、Roth斑(眼底の出血性梗塞、網膜上に綿花状のものとして認められる)などの所見がある。診断に際しては、経胸壁心エコー(できれば経食道心エコー)が有用である。 また手術適応の検討のため、心臓血管外科へのコンサルトが必要となる場合もある。手術を考慮するのは、血液培養が陰性化せず血流感染が持続する場合、疣贅が 10 mm 以上の大きさである場合、心不全がコントロールできない場合,治療開始 2 週間以内に塞栓が 1 回以上起こった場合,原因微生物により治療困難な場合(Candida 等)などである。 表1 感染性心内膜炎の臨床診断に関する修正Duke診断基準
(#)
HACEKグループ:Hemophilus parainfluenzae, Hemophilus aphrophilus, Actinobacillus
actinomycetemcomitans, Cardiobacterium
hominis, Eikenella
species, Kingella speciesの菌種の頭文字を連結 2) 治療 疣贅や弁組織は血流が乏しく、感染性心内膜炎の原因となった病原微生物を死滅させるためには、高用量の抗菌薬を長期(自己弁で2〜6週、人工弁で4〜6週以上)に投与する必要がある。 自己弁の感染性心内膜炎に対するEmpirical Therapy 第一選択 MRSA のリスクがある場合 成人(体重 50 kg 以上)で腎機能が正常な場合 ● VCM 点滴静注 1 回 1 g(または 15 mg/kg)・1 日 2 回 ±GM 点滴静注 1 回 1 mg/kg・1 日 3 回 ● 上記に CEZ 点滴静注 1 回 2 g・1 日 3 回を,培養・感受性結果判明まで併用してもよい。 第二選択(†:保険適応外) MRSA のリスクが極めて低く,血行動態も安定している場合 ● SBT/ABPC 点滴静注 1 回 3 g・1 日 4 回(1 日 12 g,保険適用量 1 日6 g まで)† +GM 点滴静注 1 回 1 mg/kg・1 日 3 回 人工弁の感染性心内膜炎に対するEmpirical Therapy ● VCM 点滴静注 1 回 1 g・1 日 2 回または 1 回 15 mg/kg・1 日 2 回 +GM 点滴静注 1 回 1 mg/kg・1 日 3 回 ±RFP 経口 1 回 450〜600 mg・1 日 1 回 起炎菌が判明した場合は、起炎菌に応じ抗菌薬を選択する。(表2) 表2 原因菌が判明している場合の抗菌薬の選択
抗菌剤の使用にも拘わらず、臨床所見や検査所見が改善しない場合は、真菌性心内膜炎の可能性についても検討する必要がある。真菌性心内膜炎では大部分をカンジダ属が占める。 |
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B.5.2 感染性心内膜炎の予防投与 |
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心疾患のなかには、心内膜炎を起こしやすい疾患があり、ハイリスク群として以下の疾患(患者)が挙げられる。 1) 特に重篤な感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高い心疾患で,予防が必要であると考えられる患者 ・生体弁,同種弁を含む人工弁置換患者 ・感染性心内膜炎の既往を有する患者 ・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室,完全大血管転位,ファロー四徴症) ・体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者 2) 感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く予防が必要であると考えられる患者 ・ほとんどの先天性心疾患 ・後天性弁膜症(詳細は本文) ・閉塞性肥大型心筋症 ・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱 上記のハイリスク群において、感染性心内膜炎予防として抗菌薬投与が推奨されている手技には以下のようなものがある。 ・歯科・口腔外科 出血を伴うような大きな侵襲を伴う口腔内歯科処置(抜歯,歯周外科手術,スケーリング,インプラント埋入、歯根端切除術、骨膜下局所麻酔など) ・呼吸器 扁桃摘出術・アデノイド摘出術など ハイリスク群に上記のような処置を行う場合には、表4に従い抗菌薬の選択を行なう。 表4 予防投与時の抗菌薬の選択(成人の投与量)
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