B.6. 血管内留置カテーテル関連血流感染症 |
血管内カテーテルが挿入されている患者で、発熱・悪寒・戦慄など敗血症症状を呈し、かつ他に明らかな感染源がない場合は血管内留置カテーテル関連血流感染症を疑う。 カテーテル感染を疑った場合、他部位から血液培養を行うとともに、そのカテーテルからも血液培養を行う。抜去可能なカテーテルは抜去し、必要なものは入れ替える。抜去したカテーテルの先端は細菌培養に提出する。 1) 推定される原因微生物 ü コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS), S. aureus (MRSAを含む) ü Candida属, ü Enterococcus属, ü グラム陰性桿菌(E. coli, Enterobacter,
P. aeruginosa, K. pneumoniae) 2) Empirical therapy 第1選択 Ø VCM 1回1g 1日2回 投与開始3日目以降に薬物血中濃度測定 + CFPM(セフェピム) CZOP(ファーストシン) 1回1-2g 1日3-4回 (最大4g/日) 第2選択 (VCMが使用不可の場合のみ) Ø DAP(キュビシン) 6mg/kg 1日1回 + CFPM(セフェピム) CZOP(ファーストシン) 1回1-2g 1日3-4回 (最大4g/日) 特に、重症・重篤感がある場合、鼠径部にカテーテルが留置されていた場合、発熱性好中球減少症ではグラム陰性菌を想定する。重症例(ショックや臓器障害の徴候など)や免疫低下、長期抗菌薬使用、中心静脈栄養鼠径部にカテーテルが留置されていた場合、複数箇所のカンジダ定着患者では抗真菌薬(MCFG、F-FLCZ、L-AMBなど)を追加する。 3) 最適化治療 • MSSA Ø CEZ (セファゾリン・セファメジンα) 1回2g 1日3回 短期留置カテーテルの場合はカテーテル抜去14日間以上、長期留置カテで免疫低下状態や合併症がない場合は4-6週間投与 MRSA 第1選択 Ø VCM 1回1g 1日2回 投与開始3日目以降に薬物血中濃度測定 Ø DAP(キュビシン) 6mg/kg 1日1回 第2選択 Ø TEIC 1回12mg/kg 12時間毎 3回投与し、投与24時間後に薬物血中濃度測定 Ø LZD (ザイボックス) 1回 600mg 1日2回 Ø ABK (ハベカシン) 1回 150-200mg 1日1回 3日目投与終了後30分後に薬物血中濃度測定 短期留置カテーテルの場合はカテーテル抜去14日間以上、長期留置カテで免疫低下状態や合併症がない場合は4-6週間投与 • メチシリン感受性CNS Ø CEZ (セファゾリン・セファメジンα) 1回2g 1日3回 カテーテル抜去した場合は5-7日間、カテーテル温存した場合は10-14日間投与。症状悪化、再発の場合はカテーテルを抜去。 メチシリン耐性CNS Ø VCM 1回1g 1日2回 投与開始3日目以降に薬物血中濃度測定 カテーテル抜去した場合は5-7日間、カテーテル温存した場合は10-14日間投与。症状悪化、再発の場合はカテーテルを抜去。 • E. faecalis / E. faecium Ø ABPC感受性: ABPC (ビクシリン) 1回2g 1日4-6回 Ø ABPC耐性VCM感受性: VCM
1回1g 1日2回 投与開始3日目以降に薬物血中濃度測定 +/- GM 1回1mg/kg 1日3回 Ø VCM耐性(VRE): LZD (ザイボックス)
1回
600mg 1日2回 短期留置カテーテルの場合はカテーテル抜去7-14日間の投与。長期留置カテでは7-14日間の投与で温存できるかもしれないが、症状悪化、再発の場合はカテーテルを抜去。 • E. coli/ K. pneumonie ESBL非産生菌 Ø CEZ (セファゾリン・セファメジンα) 1回2g 1日3回 Ø CTMセフォチアム) 1回1-2g 1日3回 (最大4g/日) Ø CTRX (ロセフィン) 1回2g 1日1回 Ø CPFX (シプロキサン) 1回300mg 1日2回 (感受性がある場合) ESBL産生菌 Ø MEPM(メロペネム・メロペン) DRPM (フィニバックス) 1回0.5-1g 1日3回 BIPM (オメガシン) 1回0.3g 1日4回 Ø CPFX (シプロキサン) 1回300mg 1日2回 (感受性がある場合) カテーテル抜去し、7-14日間の投与。長期留置カテで温存せざるを得ない場合は10-14日間の投与。治療反応がない場合はカテーテルを抜去し、感染性心内膜炎・血栓性静脈炎を除外。 Enterobacter, Serratia Ø MEPM(メロペネム・メロペン) DRPM (フィニバックス) 1回0.5-1g 1日3回 BIPM (オメガシン) 1回0.3g 1日4回 Ø CPFX (シプロキサン) 1回300mg 1日2回 (感受性がある場合) Ø CFPM(セフェピム) CZOP(ファーストシン) 1回1-2g 1日2-4回 (最大4g/日) (感受性がある場合) カテーテル抜去し、7-14日間の投与。長期留置カテで温存せざるを得ない場合は10-14日間の投与。治療反応がない場合はカテーテルを抜去し、感染性心内膜炎・血栓性静脈炎を除外。 Acinetobacter baumannii Ø SBT/ABPC (スルバシリン・ユナシン) 1回1.5-3g 1日3-4回 Ø MEPM(メロペネム・メロペン) 1回0.5-1g 1日3回+ MINO 1回100mg 1日2回 カテーテル抜去し、7-14日間の投与。長期留置カテで温存せざるを得ない場合は10-14日間の投与。治療反応がない場合はカテーテルを抜去し、感染性心内膜炎・血栓性静脈炎を除外。 P. aeruginosa (感受性検査を確認し、最適化する) Ø CFPM(セフェピム) CZOP(ファーストシン) 1回1-2g 1日2-4回 (最大4g/日) Ø TAZ/PIPC (ゾシン) 1回4.5g 1日3-4回 Ø MEPM(メロペネム・メロペン) DRPM (フィニバックス) 1回0.5-1g 1日3回 ± AMK 15mg/kg 1日1回 カテーテル抜去し、7-14日間の投与。長期留置カテで温存せざるを得ない場合は10-14日間の投与。治療反応がない場合はカテーテルを抜去し、感染性心内膜炎・血栓性静脈炎を除外。 B. cepacia Ø MEPM(メロペネム・メロペン) 1回0.5-1g 1日3回 カテーテル抜去し、7-14日間の投与。長期留置カテで温存せざるを得ない場合は10-14日間の投与。治療反応がない場合はカテーテルを抜去し、感染性心内膜炎・血栓性静脈炎を除外。 Candida属 Ø MCFG(ファンガード) 1回150mg 1日1回 (C. parapsilosis、C. guillermondiiでは感受性が低下しているため、また真菌性眼内炎を合併している場合は移行に問題があるため注意が必要) Ø CPFG(カンサイダス) 1回50mg(初日70mg) 1日1回 (C. parapsilosis、C. guillermondiiでは感受性が低下しているため、また真菌性眼内炎を合併している場合は移行に問題があるため注意が必要) Ø F-FLCZ (プロジフ) 1回400mg (初日・2日目は800mg) 1日1回 (C. glabrata、C. kruseiでは感受性が低下しているため注意が必要) Ø L-AMB (アンビゾーム) 1回2.5mg/kg 1日1回 (重症例(ショックや臓器障害の徴候など)に適応) カテーテル抜去し、血液培養陰性後14日間の投与。 Corynebacterium属・Bacillus属 Ø VCM 1回1g 1日2回 投与開始3日目以降に薬物血中濃度測定 殺菌が困難な微生物であり、カテーテル抜去を原則とする。 4) カテーテルの取り扱い 血管内留置カテーテルは速やかに抜去し、カテーテル先端を培養検査に提出し、再挿入の必要がある場合には別の部位に新しいカテーテルを挿入する。 カテーテルが抜去できない場合は菌が定着しているカテーテルを通して抗菌薬を投与する抗菌薬ロック療法やエタノールロック療法を使用することもある。ただし、グラム陰性桿菌・黄色ブドウ球菌・腸球菌、・真菌・Mycobacteriumによる場合、抗菌化学療法を72時間施行後も血液培養が陽性である場合はカテーテルを抜去すべきである。 長期カテーテルを温存した場合で、重症敗血症、感染性心内膜炎、血栓性静脈炎などを合併している場合、抗菌化学療法を72時間以上施行しても効果が乏しい場合、黄色ブドウ球菌・緑膿菌・真菌・Mycobacteriumによる感染の場合は抜去すべきである。 カテーテル抜去後(72時間以上)も菌血症・真菌血症が持続する場合は感染性心内膜炎・血栓性静脈炎・骨髄炎を考慮し4-6週間(骨髄炎は6-8週間)の抗菌薬療法を行う。 長期留置カテーテルで皮下トンネル感染・膿瘍を生じた場合は、カテーテルを抜去し7-10週間の抗菌薬投与を行う。 |