鹿児島大学病院 COVID-19感染に関する周産期管理・対応マニュアル (院外版)
2023年7月18日
1.分娩管理
1)経腟分娩
@分娩室内で、ゾーニング(床に示した赤・黄・緑テープ)に応じたエリアで物品管理、PPEの着脱を行う。入室する医療者は全てフルPPEとし、患者家族や学生などの入室は禁止し、原則限定されたスタッフで対応する。
A分娩介助者・分娩立ち合い医師は、産婦の分娩進行が活動期、または努責がかかり産婦が呼吸法を必要とする時期に入ったらサージカルマスクからN95マスクを着用とする。
B陽性者は常にマスク着用とする
C使用の可能性がある薬品や物品のみを分娩室に持ち込む
D薬剤のミキシングは緊急時以外、分娩室外の緑エリアで行う
E未使用の薬品や物品は全て拭き上げてから分娩室より持ち出す
F分娩終了後の分娩室は0.1%次亜塩素酸ナトリウムで拭き上げる。
(参考)鹿児島大学病院の分娩室ゾーニング
レッドゾーン:陽性者対応ゾーン(接触度に応じた防護具の着用をして入るゾーン)
イエローゾーン:脱衣やグリーンに持ち出す物品・機器の清拭を行うゾーン
グリーンゾーン:清潔ゾーン
接触度に応じた防護具
シチュエーション |
個人防護具 |
患者・環境に触れない |
マスク・眼の保護 |
環境に触れる |
マスク・眼の保護・エプロン・手袋 |
患者に触れる |
マスク・眼の保護・ガウン・手袋 |
エアロゾル発生時 (挿管,抜管,心肺蘇生等 経腟分娩時は産婦の分娩進行が活動期、または努責がかかり産婦が呼吸法を必要とする時期) |
N95・眼の保護・ガウン・手袋 |
使用後物品・機器の清拭消毒時 |
マスク・眼の保護・手袋 |
*注意点:清潔操作前は必ず手袋交換を実施する |
*環境に触れる場合
*接触度が高い場合
*エアロゾル発生時
2)帝王切開
@帝王切開既往など母体適応は手術室での帝王切開とする
A胎児のNRFS時は手術室での帝王切開とするが、超緊急帝王切開のみ分娩室2での対応とし、その場合は超緊急分娩室帝王切開のマニュアルに準ずる
B新生児蘇生は新生児科または小児科医とNICU看護師が対応する
(参考)感染症患者の手術部内への対応
@ 手術室内のスタッフは最少人数とし、手術室への出入りは最小限にする。
A 手術を担当する診療科医師、麻酔科医、および看護師は、サージカルマスク(用手換気、気管挿管、気管支鏡検査などエアロゾルが生じる処置を実施する際はN95マスク)、フェイスシールド、キャップ、長袖ガウン、手袋を着用する。
B 担当医師は、リスクを最小限にするよう努力し、手術時間の短縮を図る。
C エアロゾルに曝露される機会は最小限にする(麻酔導入・覚醒の際、手術担当医は入室しない)。
D できる範囲内でディスポーザブルの器材を使用する。
E 人工呼吸を行う際は、通常の人工鼻に加え、閉鎖式吸引カテーテル、麻酔器の吸気側と呼気側のバクテリアフィルターを呼吸回路に用いる。
F マスク以外の着用した防護具は手術室を出る前に、マスクは手術室を出た後廃棄し、適切な手指消毒を実施する。
G 患者退室後0.1%次亜塩素酸ナトリウムを用いたターミナルクリーニングを実施する。
H 医療機器は手術部スタッフが消毒用クロスにより拭き上げを行う。
2.新生児管理
1)出生直後〜48時間
@出生後は48時間クベース管理とし、出生時・48時間後の2回陰性を確認した時点で非濃厚接触者として扱う
A管理場所はNICUまたは新生児室とする
B新生児対応スタッフはサージカルマスク、アイガード、袖なしエプロンを着用し、接触予防策で対応する。
2)COVID-19陰性確認後の新生児の扱い
@標準予防策で対応し通常の新生児管理とする。
A新生児は、授乳の際(添い寝等はしない)は母児同室可とする。母体はサージカルマスクを着用していること。
3)COVID-19陽性新生児の扱い
@隔離解除までクベース管理とし、対応スタッフはサージカルマスク、アイガード、袖なしエプロンを着用し、接触予防策で対応する。
A児の全身状態に問題がなく、陽性である母親の全身状態が安定し、育児環境が整えば、母児同室は可とする。病室内では通常の母児同室管理となる。
B預かりの際は新生児室でクベース管理となる。
C光線療法が必要な場合は、病室で治療を行う。
3.産後管理
1)母体は個室で管理 (必ずしも陰圧室である必要はない)
2)母児同室の際は感染のリスクを説明し、同意を得る。
3)直接母乳、搾乳の瓶哺乳は可能。また、直接母乳・搾乳の際の乳頭の清拭や消毒は不要。
4)授乳介助の際は、フルPPEとする。
5)シャワーは病棟内の共同シャワー室を最後に使用してもらい、中性洗剤で洗浄を行う。
6)退院診察はポータブル経腹超音波を使用する。(使用後は清掃と消毒用クロスによる清拭消毒を行う。)
4. NICU・新生児室における管理
1)新生児との面会
@ COVID⁻19と診断された場合父母とも症状出現後11日目以降から可とする。
A 濃厚接触となった父母は最終接触後8日目以降から可。
B 母のみ発症の場合、父は無症状であり濃厚接触例でなければ面会可。
2)院外からの新生児搬送例のうち、母体がCOVID-19陽性で母児同室していた場合は、入院当日に新生児のPCR検査を提出する。
3)新生児の状態が安定していれば結果に関わらず、最終接触から5日目にPCR陰性確認するまでは保育器管理とする。