鹿児島大学病院 COVID-19感染患者への対応マニュアル

(外部版)2023/05

 

. 感染症入院患者への対応

(1) 搬送の際は、患者にはサージカルマスクを着用し、患者の移動は病室外での検査が必要な場合など最小限とする。

(2) 担当する医療スタッフは個人防護具着脱訓練を受けたもの、個人防護具着脱方法・動画・自己チェックリストで学習したものに限定する。

(3) 原因がはっきりしない肺炎患者(新型コロナウイルス感染症が疑われる患者)で経路別予防策を実施するべき患者は個室を利用する。

 

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫・接触感染(エアロゾルによる感染リスク)である

※特に飛沫やウイルスが付着した手が顔の粘膜に付着することを防ぐことが重要

感染症患者・病原体保有者・疑い患者(疑似症該当・非該当)の診察時は、アルコール手指

消毒薬による手指衛生後、患者への接触度に応じて次の個人防護具を選択する。

 

【患者に接触しなくとも必ず装着すべき防護具】

・飛沫予防策として

サージカルマスク 表面が飛沫により汚染された場合は、その都度交換する。

眼の保護(フェイスシールド・アイシールド・ゴーグル等) アルコール(70%で清拭消毒後、再利用しても良い)

グラフィカル ユーザー インターフェイス

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【患者に接触する場合】

 ・接触度が低い場合

  ➀サージカルマスク

  ➁眼の保護(フェイスシールド・アイシールド・ゴーグル等)

  ➂袖なしエプロン

  C手袋

 

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 ・接触度が高い場合

 ➀サージカルマスク

 ➁眼の保護(フェイスシールド・アイシールド・ゴーグル等)

  ➂長袖ガウン

 C手袋

 

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【エアロゾルの発生が懸念される場合】

 N95マスクを使用する。

N95マスクの使用は、事前のフィットテストと着用時のシールチェックを行う。

※ 一時的に大量のエアロゾルが生じる処置

気管挿管・抜管・非侵襲的陽圧換気・ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)(ネーザルハ

イフロー(NHF))・気管支鏡検査・心肺蘇生・用手換気・気管切開・ネブライザー療法、誘

発採痰・上部消化管内視鏡・気管内吸引など

    ・N95マスク表面の汚染が予想される場合、N95マスクの上にサージカルマスクを着用する。

 

参考「COVID-19確定患者に対する様々な状況におけるPPEの選択」

医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドー第5版―日本環境感染学会

 

サージカルマスク

N95マスク

手袋

ガウン

眼の保護

診察

(飛沫曝露大)

診察

(飛沫曝露小)

呼吸器検体採取

エアロゾル産生手技

×

環境整備

 

リネン交換

 

患者搬送

 

〇:必ず使用する :状況により使用する

 

(3)  濃厚接触者に該当する症例・個人防護具:標準予防策(サージカルマスク、眼の保護)

 

 

2.患者病室や診療エリアにおける清掃・リネン類の管理・食器・物品・書類の取り扱い

(1) 病室の日常清掃は委託業者が請け負わないため、病棟スタッフで施行する。

【日常清掃】

@ 床:乾式清拭後、湿式清掃

A 洗面台:中性洗剤で洗浄

B トイレ:次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm)またはアルコール(70%)で清拭

C 浴室:中性洗剤で洗浄(2日おき)

D その他、高頻度接触表面は通常の環境整備に基づいて次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm)またはアルコール(70%)で清拭消毒する。

(2) 感染性廃棄物は段ボールの外側を次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm)またはアルコール(70%)で清拭した後に持ち出す。

(3) 患者退室後はターミナルクリーニングを実施する。

(4) リネン類の管理

@  水溶性バッグに入れて空気を抜き、付属の紐で固く口を閉じる。 

A 別ビニール袋に入れて、外側を次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm)またはエール(70%)で清拭消毒し、「医療機関名(部署名)」「コロナウイルス」「回収した日付」を記載する。

 回収依頼の連絡し、指定場所に提出する。

(5) 食器の取扱

患者の食器は通常食器で良い。使用後の食器を取り扱うときは、エプロン・手袋を着用し、手指消毒を実施する。

(6) 物品・書類の管理・消毒

@     病室・診療エリアで使用した物品は、アルコール(70%)または次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)で清拭消毒する。いずれも使用できないものは、界面活性剤等で物理的に汚染を拭き取るように清拭消毒する。消毒方法が取り決められている機器等に関しては、その方法に従う。

A     書類は、清拭消毒できないためクリアファイルに入れて運用する。クリアファイルを清潔エリアに出すときは外側を清拭消毒する。スキャン等のために、クリアファイルから書類を取り出すことは可能だが、取扱い後は手指消毒を実施する。

B     病室・診療エリア内の棚内に保管されている物品は、扉を閉めて汚染を防ぎ、扉がない棚で保管されている物品は養生する。飛沫・接触により汚染した可能性がある場合は(1)に準じて清拭消毒する。

 

. 感染症患者の院内搬送

【移動】原則、患者はマスク着用する。

(1)     動線の確保

病棟から各部署へ移動する場合、他者との接触を最小限に抑えるため人払いを行う。人払い担当職員が先導し、通路の職員・患者が搬送患者と接触しないよう配慮する。

気管内挿管患者はバクテリアフィルターを使用し、それ以外の患者はサージカルマスクを装着し、使用後の換気は不要とする。

(2) 個人防護具

@ 患者対応スタッフ:袖なしエプロン・サージカルマスク・眼の保護(フェイスシールド・アイシールド・ゴーグル)・手袋

A  先導スタッフ:サージカルマスク

B 清掃スタッフ:サージカルマスク・半袖エプロン・眼の保護(フェイスシールド・アイシールド・ゴーグル)・手袋

(3) 清掃

患者に接するスタッフ以外にスタッフが同行し、清掃を行う。清掃する場所は移動中に患者や搬送する職員が接した部分とする。清掃担当スタッフはサージカルマスク、半袖エプロン、手袋を着用する。清掃担当スタッフは患者に接触しないで同行する。

 

. 感染症患者の手術部内への対応

@     手術室内のスタッフは最少人数とし、手術室への出入りは最小限にする。

A     手術を担当する診療科医師、麻酔科医、および看護師は、サージカルマスク(用手換気、気管挿管、気管支鏡検査や頭頸部・呼吸器領域手術・気管切開実施などエアロゾルが生じる処置を実施する際はN95マスク)、フェイスシールド、キャップ、長袖ガウン、手袋を着用する。

B     担当医師は、特に頭頸部・呼吸器領域手術において、ドリル・電気メス等の使用でエアロゾルが発生する可能性があるため、リスクを最小限にするよう努力し、手術時間の短縮を図る。

C     エアロゾルに曝露される機会は最小限にする(麻酔導入・覚醒の際、手術担当医は入室しない)。

D     できる範囲内でディスポーザブルの器材を使用する。

E     人工呼吸を行う際は、通常の人工鼻に加え、閉鎖式吸引カテーテル、麻酔器の吸気側と呼気側のバクテリアフィルターを呼吸回路に用いる。

F     マスク以外の着用した防護具は手術室を出る前に、マスクは手術室を出た後廃棄し、適切な手指消毒を実施する。

G     患者退室後次亜塩素酸ナトリウムを用いたターミナルクリーニングを実施する。

H     医療機器は手術部スタッフが消毒用クロスにより拭き上げを行う。

 

. 感染症患者の放射線検査

(1) X線撮影はポータブル撮影を原則とする。

(2) CTは午前または午後の最後に使用し、CT室は使用後装置をアルコールクロス消毒剤で清拭する。

 

.  感染症患者への医療機器、人工呼吸器使用について

(1)   新型コロナウイルス感染患者にME機器(輸液・シリンジポンプ、人工呼吸器、体外式膜型人工肺等)を使用した場合は、使用後に必ず機種に応じた清拭消毒を行う。

(2) 人工呼吸器管理について

・基本は人工鼻用回路を使用する。

・吸気フィルター、呼気フィルターを使用する。

・人工鼻や閉鎖式吸引チューブの交換は通常の患者と同様、毎日交換する。交換時にはエアロゾルが発生するリスクを考慮し、N95マスクを装着する。

NHFを使用する際は、NHFではカニューレの上からサージカルマスク装着を、BiPAPは閉鎖式(NIVなど)を使用し、原則陰圧個室で管理する。

・バックバルブマスク使用時は、必ず人工鼻を装着する。

 

. 亡くなられた場合の対

(1)  死亡退院が予測される場合、事前にご家族とお見送り方法について話し合う。

※ご遺族等の方やご遺体等を取り扱う事業者に、接触感染に注意する必要があるが一般的な感染対策でコントロールは可能であること、特に自身の顔などを触れる前に手指消毒を実施し、接触リスクが高い場合は手袋・エプロンを着用することを説明する。事業者と情報共有シートを用いて情報共有を行う。

※症状のある濃厚接触者となっているご遺族は発症のリスクがあることを踏まえて、来院をご遠慮いただく。無症状の濃厚接触者が来院される場合は、他の患者・家族等との接触をさけ、職員は接触時にマスク・目の保護・手指衛生を厳守する。

(2)  ご遺族がご遺体に面会しご遺体の顔や手に触れることを希望された場合、サージカルマスクは装着の上家族の希望に応じ、手袋・エプロンの着用を行う。医療者は家族へ面会前に汚染した自身の手で顔はさわらないように説明をすること、面会終了時使用した防護具は適切に脱いで手指消毒を実施するよう対応する。

(3)   ご遺体に適切な感染対策(清拭及び鼻、肛門等への詰め物や紙おむつの使用等により体液等の漏出予防を行うこと等)が可能な場合は納体袋に収容する必要はない。臨終後の対応、エンゼルケア、納棺でご遺体に触れる場合は、Full PPE(長袖ガウン、手袋、サージカルマスク、フェイスシールド)を着用する。

外袋は棺に敷く。棺はストレッチャーに乗せてレッドゾーンへ置く。内袋の取手を持ち、外袋が敷かれた棺にご遺体を移す。汚染していないPPEを装着したスタッフが外袋を閉じる。その後、袋の表面をアルコールクロスで消毒する。棺を閉め、ガムテープで密封する。棺、ストレッチャーをアルコールクロス(エタワイパー®)で消毒した後、グリーンエリアに出す。


 

鹿児島大学病院 COVID-19院内発生時対応マニュアル

(外部版)2023/05

 

. 院内で陽性例が確認された場合の対応

(1) 職員・患者で陽性例が確認された場合、当該職員・主治医はすぐにリスクマネージャーに連絡する。

(2) リスクマネージャーは発症2日間からの接触者を確認し、感染制御部に報告する。病棟内での拡大が否定できないと感染制御部が判断した場合、病院長報告の上当該病棟の新規入院一時中止の必要性等を協議する。

(3) リスクマネージャーは、陽性者が触れた場所を、アルコール環境クロスで清拭・消毒するよう指示する。

(4) 感染制御部は病棟内での拡大が確認された場合(目安として3名以上)、保健所へ報告の上、積極的疫学調査の対応(PCR検査の対象も含め)について協議を行う。リスクマネージャーと共に接触した患者と接触した職員・実習生をリストアップし、発熱・呼吸器症状を有する者がいないか確認し、PCR検査を実施すると同時に無症状者についてもPCR検査や抗原定量検査の実施を検討する。行政検査で実施する場合は対象者をリストアップし、検査部・医務課と共有する。陽性が判明した入院患者はB2階病棟へ転棟または現在の入院病棟でゾーニングし、個室管理またはコホーティング(大部屋での集団隔離)の上で経路別予防策を行う。

(5) 濃厚接触に該当する入院患者も当該病棟個室への移動、あるいは同一病室に集め(コホート管理)、発症者との最終接触から5日間健康観察および有症状時の検査を行い、5日目以降のPCR検査陰性を確認の上隔離解除可とする。ただし、その後発症する可能性はあり、7日目までは綿密な健康観察をする。濃厚接触期間に自宅退院することは可能だが、発症する可能性を説明し、感染対策指導を行う。医療機関などハイリスク場所への訪問は緊急性を考慮する。緊急性がある場合は、訪問先へ情報提供を行う。

(6) 下記「医療従事者(職員・従業者)の感染患者接触時の曝露リスク評価と対応」に基づき、濃厚接触者と、リストに挙がったが濃厚接触に該当しないとされた職員の対応を行う。

(7) 集団発生が確認された病棟は最終の感染例が確認されてから7日間は閉鎖することを基本とし、濃厚接触に該当しない入院患者を含めた対応や病棟の運営方針、ホームページでの広報を保健所等とも相談の上臨時感染症対策委員会で決定する。集団発生時については当該部署や必要業務(PCR検体採取・PCR検査実施・院内外情報共有・診療運営・メンタルケア等)に対応する部署へ参加をよびかける。

 

. 医療従事者(職員・従業者)の感染患者接触時の曝露リスク評価と対応

(1) 当院の入院・外来患者、職員等に陽性例が判明した場合の対応

@ 所属部署のリスクマネージャーは感染制御部へ連絡する。リスクマネージャーは同室者・濃厚接触者のリストを作成する。

 

  濃厚接触者の定義

    患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者

  適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者

  患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者

・ 手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況周辺の環境や接触の状況 等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

 

  患者(確定例)の感染可能期間

・ 発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状(以下参照)を呈した 2日前(無症状者は検体採取日から2日前)から隔離開始までの間

*発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など

 

鹿児島大学病院の濃厚接触例の報告基準

 

(2) 就業制限

      15分以上感染患者に接触した医療従事者は、以下の場合曝露リスクありとして就業制限を行う。

@ 患者がマスクをしている場合:

・ 医療従事者がサージカルマスクまたはN95マスクを使用していない場合

・ 体位変換などの広範囲の身体的接触があり、マスクに加えガウン・手袋が未装着だった場合

A  患者がマスクをしていない場合:

・医療従事者がサージカルマスクまたはN95マスクを使用していない場合

・エアロゾルを生じる処置をした際マスクの装着有無に関わらず眼の保護がない場合

・エアロゾルを生じる処置時病室にいてマスクの装着有無に関わらず眼の保護がない場合

 


表 医療従事者の曝露のリスク評価と対応

 

1 記載されているPPE 以外のPPE は着用していたと考える。例えば「眼の防護なし」とある場合は、それ以外の推奨されるPPE(マスク、手袋、ガウン)は着用していたと考える。

2 15分以上の接触時間を曝露リスクとする。ただし短時間でも感染リスクが発生する可能性もあり、時間および患者と医療従事者が大量のエアロゾルを生じる処置を実施した場合やこれらの処置を実施中の病室内に滞在した場合は中リスクと判断する。

 

鹿児島大学病院での療養・就業制限期間のサマリー