HTLV-1

 

HTLV-1とは

 ATL(成人T細胞白血病:adult T-cell leukemia)は、HTLV-1の感染によってひきおこされる。感染すると、抗HTLV-I抗体陽性となり、キャリアとなる。キャリア 3,000人に1人の割合でATL発症の危険性がある。

 その他にも、HTLV-1関連脊髄症、ブドウ膜炎などが起こることが知られている。

 感染は、血液・精液・乳汁の細胞成分(ウイルス感染リンパ球)の移入によって起こる。現在ワクチンはない。

@ 母子感染  :母乳を介して母子間に垂直伝播

A 性行為感染:精液を介して男性から女性に水平伝播

B 血液感染  :血液を介して水平伝播

1986年以降、輸血では献血時スクリーニングが行われているため現在、輸血による感染はほとんどない)

対 策

HTLV-1の感染力は極めて弱く、大量のウィルス感染細胞(リンパ球)の移入がないと感染しない。さらに、ウィルス感染細胞は乾燥・熱・洗剤で簡単に死滅するため、水・衣類・食器・寝具などを通して感染することはない。従って、特別な対策は必要ない。標準予防策で十分である。 

 母乳を介しての垂直

 感染防止

 キャリアの場合は、授乳方法を選択してもらい、慎重に対処することが大切である。

   @断乳する。

   A3カ月以内の短期授乳

   B加工母乳を与える。(5630分加熱あるいは-2012時間凍結)

     但し、Bは鹿大病院では行われていない。

 手指消毒

流水と石鹸による手洗いまたは擦式消毒用アルコール製剤を使用する。

 医療器具類

特別な扱いは必要としない。

 病衣・リネン類

血液・体液付着時は、黄色のビニール袋に入れて洗濯に出す。

血液・体液付着時以外は、特別な扱いは必要としない。

便器・尿器

特別な扱いは必要としない。

 患者・家族に対して

血液や体液に直接触れないようにする。血液・体液付着時は手袋を使用するように指導することが望ましい。ひげそり・かみそりは共有しない

※ HTLV-1感染は、白血球に含まれるウィルス感染リンパ球によって、感染が引き起これるが、白血球が壊れると感染力がなくなる。そのため、流水の洗浄だけでも感染力が無くなるとされているが、念のため、一般の消毒液を使用した方が望ましい。

   HTLV-I抗体検査は原則として患者さんの承諾を得ること。

   HTLV-I抗体陽性の血液や体液からの汚染でATLが発症する危険性は極めて低い。