発生時の対応

(1)    インフルエンザを疑わせる入院患者が発生した場合

1.    発熱、上気道炎症状などインフルエンザ疑い患者がみられた場合、問診と診察の上、個室対応とし、インフルエンザ迅速検査を行い、すみやかに診断を試みる。また鑑別を要する新型コロナウイルスPCR検査の実施も考慮する。

2.    インフルエンザ迅速検査は、Thinkに入力後、鼻腔拭い液を採取し提出する。結果はThink上で確認する。

3.    インフルエンザ迅速検査陽性例は検査部からICTメーリングリストで報告する。

4.    感染していても発症初期(発症数時間)は抗原検査が陰性となる場合があること、偽陰性になることもあるため、抗原検査が陰性でもその判断は慎重に行う必要がある。

5.    翌日も同症状が続く場合は、抗原検査を再検することも検討する。

(2)    入院患者にインフルエンザが発生した場合

1.   インフルエンザ迅速検査が陽性でインフルエンザが確定した場合、担当医はリスクマネージャーにすみやかに連絡し、またリスクマネージャーは感染制御部(5708)に報告し、同室者および濃厚接触者のリストを作成する。

入院患者インフルエンザ発生届(時間外の連絡は、迅速な対応が必要とされる状況か集団発生が予測される場合のみとし、それ以外は翌日報告で可)

2.   患者に抗インフルエンザ薬を投与し、個室隔離による飛沫予防策を実施する。患者と接触する職員は、サージカルマスクを着用する。エプロンは気道分泌物で白衣が汚染するおそれのある場合は着用する。

3.   病棟での個室隔離が困難な場合は、感染症病室の利用を検討する。

4.   隔離期間は基本的には7日間を目処とし、咳嗽などの症状の程度によっては延長する。

5.   発症時に同室であるなど濃厚接触が明らかな患者もインフルエンザを発症する可能性があるため、これらの患者は準感染患者として個室隔離または同一病室にコホーティングし、抗インフルエンザ薬の予防内服を考慮する。隔離期間は4日間を目処とする。患者と接触する職員は、サージカルマスク着用など飛沫予防策を実施する。

6.   予防投与は、腎機能正常者ではオセルタミビル75mg113日間の内服を原則とし、最終接触から2日以内に開始する。腎機能低下時はオセルタミビルの減量投与(腎機能別推奨投与量を参照)またはラニナミビル(イナビル®40mg単回吸入を使用する。集団発生時は投与期間延長を検討する。

7.   インフルエンザ患者に対し気管内挿管や気管支鏡などエアロゾルが発生する処置を行う場合は、N95マスクを使用し空気感染対策をとる。

8.   患者と予防具なしに接触した職員は、数日中にインフルエンザを発症する可能性があることを自覚し、症状出現時は早めのマスク着用など、伝播防止に努める。症状がない限りインフルエンザ迅速検査を行う必要はない。

(3)    職員がインフルエンザを発症した場合

1.    呼吸器症状(咳、鼻汁、鼻閉、咽頭痛)がある場合は、早めにサージカルマスクを着用し手指衛生を徹底する。

2.    発熱があるときは出勤せずに、リスクマネージャーに連絡し近医受診を行う。出勤後インフルエンザ様症状をともなう発熱があった場合は、サージカルマスクを装着し、入院患者や他職員との接触をさけ、リスクマネージャーに報告する。

3.    インフルエンザ迅速検査陽性または陰性でも明らかなインフルエンザ様症状(37.5度以上の発熱、上気道炎症状、全身倦怠感)を認める職員はインフルエンザ発症例とし、発症職員を認めた場合、リスクマネージャーは感染制御部(5708)に連絡する。(時間外の連絡は、迅速な対応が必要とされる状況か、集団発生が予測される場合のみとし、それ以外は翌日報告で可)

4.    発症職員所属部署のリスクマネージャーは感染制御部(5708)に報告し、病棟医長・病棟師長と協力の上、発症職員が発症前日より直接接触した入院患者のリストを作成する。感染制御部は該当部署と情報共有を行い、また該当入院患者の病棟医長・病棟師長は接触入院患者のインフルエンザ症状出現を注意する。発症者とマスク無しでの長時間(おおよそ15分以上)接触など濃厚接触が明らかな場合は予防投与も考慮し、該当職員のリストアップも行う。インフルエンザ発症職員報告書

5.    発症時に職員がマスク着用をしておらず、飛沫感染の可能性がある入院患者については、感染制御部および該当入院患者の入室病棟のリスクマネージャーで協議の上抗インフルエンザ薬の予防投与を検討する。

6.    リスクマネージャーは発症職員と接触した職員もインフルエンザを発症するリスクがあることを考慮し、所属職員のインフルエンザ様症状の出現をチェックする。

7.    発症した職員は、発症から5日間かつ解熱後2日を経過するまで自宅療養する。ハイリスク患者のケアは、発症後7日間かつ呼吸器症状が消失するまで制限する。

8.    勤務復帰後も発症から7日間が経過するまでは、患者や職員と12 m以内で接触するときはサージカルマスクを着用する。

(4)    実習生にインフルエンザが発生した場合

1.    各講座、部署の実習担当者は実習生にインフルエンザ様症状がないか確認する。

2.    呼吸器症状(咳、鼻汁、鼻閉、咽頭痛)がある場合は、早めにサージカルマスク着用し手指衛生を徹底させる。

3.    発熱があるときは実習に参加せず、実習担当者へ連絡し近医受診を行う。また実習中に発熱があった場合も実習担当者に連絡し、帰宅し近医受診を行う。

4.    インフルエンザ迅速検査陽性または陰性でも明らかなインフルエンザ様症状(37.5度以上の発熱、上気道炎症状、全身倦怠感)を認める実習生を認めた場合、実習担当者はリスクマネージャーを通じ感染制御部(5708)に連絡する。(時間外の連絡は、迅速な対応が必要とされる状況か、集団発生が予測される場合のみとし、それ以外は翌日報告で可)

5.    報告を受けたリスクマネージャーは病棟医長・病棟師長と協力の上、実習生が発症前日から直接接触した入院患者のリストを作成し、感染制御部および該当入院患者の病棟に報告し、症状の発現に十分注意する。

6.    発症時に実習生がマスク着用をしておらず、飛沫感染の可能性がある入院患者については、感染制御部および該当する入院患者の病棟のリスクマネージャーが協議し抗インフルエンザ薬の予防投与を検討する。

7.    実習担当者は接触した他の実習生もインフルエンザを発症するリスクがあることを考慮し、インフルエンザ様症状の出現をチェックの上実習の可否を検討する。

8.    発症した実習生は、発症から5日間かつ解熱後2日を経過するまで自宅療養する。

9.    発症から7日間が経過するまでは、患者や職員と12 m以内で接触するときはサージカルマスクを着用し、ハイリスク患者との接触はさける。

(5)    集団発生の場合

1.   インフルエンザの集団発生の定義は明確にされてはいないが、当院においては、特定の病棟の入院患者3名以上が1週間以内にインフルエンザに罹患した場合と定義する。

2.   集団発生がみられたら、感染制御部は病院長にすみやかに連絡の上、患者の隔離または患者の一室への収容(コホーティング)、抗インフルエンザ薬予防投与などの感染対策を実施し、必要に応じて臨時ICTスタッフ会議等を開催する。

3.   同一病棟の入院患者で10名以上のインフルエンザ発症者を認めた場合は保健所に連絡し、新規入院患者の制限や病棟閉鎖を検討する。