■水痘 |
水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster
virus)による。 空気および接触予防策を行う。 潜伏期は多くは14−16日であり、最短10日から最長21日である。免疫グロブリンを投与した場合、潜伏期は28日まで延長することが報告されている。 感染力は発症1−2日前から発症直後が最も強く、痂皮化するまで継続する。 免疫不全者が発症すると致死的となるため、厳重な対策が必要である。 |
■入院時の水痘についての問診 |
小児の入院患者については、免疫の確認(ワクチン接種歴、既往歴)、最近2〜3週間の水痘患者との接触歴について、問診を行う。 付き添い家族についても、水痘に対する免疫を確認し、感受性者にはワクチン接種を勧める。 |
■病棟内で水痘が発生した場合 |
1) ただちに病棟医長または病棟師長に連絡し、病棟医長または病棟師長はICTに連絡する。日曜・休日も連絡のこと(夜間は翌朝で可) 2) 発症した患者 可能なら退院とし、外来管理とする。退院できない場合、病変が乾燥して痂皮化するまで感染症病室等に隔離し、 空気および接触感染防止対策を行う。 水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による感染症のうち24時間以上入院を必要とする(他疾患で入院中に水痘を発症し、かつ、水痘発症後24時間以上経過した例を含む。)場合は五類感染症として保健所への届出が必要である。 3)接触者の取り扱い 当該部署のリスクマネージャーは発症2日前からの同じ病棟内の入院患者全員および同じ病棟内の付き添い者、さらに検査移動などで明らかに当該患者と接触した他の患者の罹患歴と予防接種歴を確認する(注1)。空気感染であるため、直接的接触がない場合でも全員への対応が必要となる。また職員、あるいは当該患者と接触した他部門の医療従事者についても免疫の確認を行う。 病歴から水痘への免疫が確認できない場合は、水痘抗体検査(EIA IgG)を行う。ICTに報告の上、対象患者の血清をまとめてリストとともに細菌検査室へ血清を提出する。 免疫が確認された患者は通常と同様に扱う。 水痘に免疫がない(感受性がある)患者は可能なら退院し、外来管理とする。発症予想日まで入院する患者は、説明と同意を得た上でいずれかまたは複数の発症予防策を行う。 水痘・播種性帯状疱疹の病棟内感染予防策 森内 浩幸 小児感染免疫 Vol. 22 No. 2 p181-186、2010 · 水痘ワクチン接種:曝露後72時間以内であれば効果が期待できる。(120時間以内であれば症状を軽減できる)。ただし、免疫不全患児などには予防接種は禁忌である。 · 高力価抗水痘・帯状疱疹ウイルス抗体含有免疫グロブリン投与:曝露後出来るだけ早く(接触後72〜96時間以内)投与する。 · アシクロビルの予防内服。発症予想日1週間前から7日間、40〜80
mg/kg/日(分4)(最大1回400mgを4回)を投与する。免疫不全患者では発症予想日1週間前から14日間と延長し投与する。バラシクロビル(成人1回1000mg 3回)でも可能である。 · 予防策をとっても発症する可能性はあることを説明する。また、感受性患者は接触後10〜21日間は、できれば個室や感染症病棟にあらかじめ隔離し、また感受性職員・実習生は同期間勤務・実習を停止とし、免疫不全者との接触を避ける。 4)新入院患児の取り扱い 罹患歴のある児または予防接種歴のある児は通常と同様の扱いとする。 罹患歴のない児または予防接種歴のない児には予防接種を勧める。 5)上記の対策を行っても、発症する可能性があること。ただし、発症予防策を行えば症状を軽減できることを説明する。 (注1)罹患歴調査については、水痘の発疹の特徴を教えた後に聴取する。家族、特に該当者より年少の兄弟姉妹の既往歴を聴取する、過去に水痘や帯状疱疹の患者と接触の既往があるか等を聴取することが推奨される。水痘の罹患歴調査には水痘皮内テスト(阪大微検)も参考になる。 |
■外来に水痘患児が受診した場合 |
1)
外来特殊診察室に誘導し、優先診療を行う。 2) 同時期同じ待合室にいた患者のリストを作成し罹患歴と予防接種歴を確認する。 3) 感受性のある免疫不全患者には、説明の上前記の予防策をとる。 4) 感受性がある免疫不全ではない患者には、約2週間後に発症する可能性があることを説明し、発症時は医療機関受診を勧める。 |
■職員・実習生が水痘を発症した場合 |
リスクマネージャーへ報告する。病変が乾燥して痂皮化するまで勤務・実習を停止する。 |
■小児科・小児外科における水痘発症事例の費用の取り扱いについて |
予防投与の費用については、当該診療科から感染制御部に連絡があり、感染制御部で院内感染防止の必要があると認めた範囲において次の取り扱いとする。 1 入院患者への予防投与(アシクロビル内服)・・病院負担とする。 2 入院患者で「「造血幹細胞移植時の管理」の範囲期間で投与された場合は、通常の診療報酬として対応する。(審査情報提供事例:210) 管理期間 手術前(手術日含めて7日間) 手術後(手術日含めて30日間) 3 付き添い家族へ予防投与する場合は、自費診療として患者家族負担とする。 ※ 本件に係る取り扱いは、後日、感染症対策委員会に報告するものとする。 |