耐性緑膿菌・

多剤耐性緑膿菌 MDRP (multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa)

 

はじめに

緑膿菌は偏性好気性グラム陰性桿菌であり、土壌、河川、下水などの水中や、植物などの自然界に広く分布する。

健常者の腸管(25%)や皮膚(02%)からも検出される。

エンドトキシンなどの毒素を産生する。

バイオフィルムを形成しやすい。

逆性石鹸や塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジンなどの消毒薬に馴化し抵抗性を示しやすい。

耐性緑膿菌検出されたら

アミノグリコシド系・カルバペネム系・ニューキノロンに耐性をしめす緑膿菌に対しては原則個室への隔離を行い、接触予防策をとる。これら耐性菌が検出されたら、細菌検査室はICTメーリングリストで連絡する。

検出患者へは、説明文書を用いて説明し、感染対策への協力を依頼する。

特徴

·      耐性緑膿菌と一般の緑膿菌とでは感染力や病原性に違いはない。

·      フルオロキノロン耐性株やD2ポーリン減少によるカルバペネム系低感受性株は、抗菌薬を使用することにより必然的に発生する。

·      一方、メタロβ-ラクタマーゼ産生によるカルバペネム高度耐性株は抗菌薬を使用しても自然には発生せず、院内感染の可能性が高い。

耐性緑膿菌の問題点

1.       一般の緑膿菌と同様に湿潤環境やヒトの腸管内に定着しやすく、病院環境に一旦定着・蔓延すると長期間生息し消滅させることが難しい。

2.       ほぼ全ての抗菌薬の効果が期待できない。

3.       エンドトキシンを産生するためエンドトキシンショックを誘発しやすい。

4.       耐性遺伝子が水平遺伝する。

拡散と感染の防止

1.       感染・保菌患者の個別(個室)管理もしくはコホーティング

2.       標準+接触予防策の正しい実施、吸引・陰部清拭・尿路カテーテル処置時の接触予防策の徹底

3.       不必要な蓄尿の中止

4.       カルバペネム系薬など広域抗菌薬の適正使用

カルバペネム系・ゾシン・ニューキノロン系などの広域抗菌薬の長期使用を避ける。

早期検出のため、14日以上広域抗菌薬使用時には、2週間に1回程度の頻度で尿または便による監視培養を行う。

5.       湿潤な環境(病棟内の水まわり、汚物処理室など)の衛生管理。2系統以上の耐性緑膿菌検出例の場合、病室手洗い場の排水口は、120.1%次亜塩素酸ナトリウムで30分間消毒する。

水回りの消毒

6.       医療器具の洗浄・消毒および乾燥の徹底

7.       保菌者に対しては抗菌薬による除菌はおこなわない