■エムポックス |
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●臨床像 ・通常6-13日(最大5-21日 中央値8.5日)の潜伏期間の後に発症 ・古典的な症状として発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの前駆症状が0-5日程度持続し、発熱の1-3日後に皮疹が出現、前駆症状が必ずしも認められない事例も報告 -リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。 (天然痘や水痘では、通常リンパ節腫脹を伴わない) -皮疹は典型的には顔面から始まり体幹部へと拡大も、病変が会陰部・肛門周囲や口腔などの局所に集中する場合もあり 各皮疹は、原則として紅斑→丘疹→水疱→膿疱→結痂→落屑と段階が移行するが、異なる段階の皮疹が同時にみられることがある エムポックスでは手掌や足底にも皮疹が出現(水痘との鑑別) -肛門直腸病変による肛門痛・テネスムス・下血や、陰茎・尿道病変による排尿困難をきたした事例も報告 ・ 2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、曝露の程度、患者の健康状態、合併症(皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎など)により重症化 ・エムポックスを疑うポイントは、@皮疹(特に性器や肛門周囲)、A発熱やリンパ節腫脹などの全身症状、B性交渉歴や海外渡航歴がある、などである
●疑い例及び接触者に関する暫定症例定義 1)「疑い例」の定義:下記の@〜A全てを満たす者を指す。 @ 次の1つ以上の症状を呈している。 説明困難な急性発疹を呈している。発熱(38.5℃以上) ・頭痛 ・背中の痛み・重度の脱力感・リンパ節腫脹・筋肉痛・倦怠感・咽頭痛・肛門直腸痛・その他の皮膚粘膜病変 A 次のいずれかに該当する。 ・発疹等の発症の 21 日以内に複数または不特定の者と性的接触があった。 ・発疹等の発症の 21 日以内にエムポックスの患者、無症状病原体保有者又は@を満たす者との接触(レベル中以上)があった。 ・臨床的にエムポックスを疑いに足るとして主治医が判断をした。
●診断 主に水疱や膿疱の内容液や蓋、あるいは組織を用いてPCR検査により診断 ●治療 対症療法(国内で発生したエムポックスの患者に対してテコビリマットを投与し、安全性・有効性を評価する臨床研究を国立国際医療研究センター病院等において開始)
接触状況による感染リスクのレベル |
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■外来での対策 |
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空気感染を起こすと考えられている麻しんや水痘との臨床的な鑑別が困難であるため、発熱と発疹がありそれらの感染症が否定できない間は、トリアージ施設処置室、感染症外来で空気予防策を実施する |
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■病棟での対策 |
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l エムポックスの主な感染対策は接触予防策と飛沫予防策である。 l 接触予防策では、特に皮疹や痂皮、浸出液などとは直接的に接触しないように注意する。また、痂皮や浸出液で汚染された衣類やリネンなど、物品を介した感染にも注意する。 l エムポックスが空気感染を起こすことは確認されていないが、麻疹や水痘などの空気感染を起こす感染症との臨床的な鑑別が困難であるため、それらが否定できない間は空気予防策の実施が求められる。
l 病室はB棟2階病棟(重症例はICU 8室または救急 6室)とする l 医療従事者がエムポックス確定患者に接する場合(検体採取時含む)は、患者を換気良好な部屋に収容し、N95マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を着用する(患者のリネン類を扱う者や清掃担当者も同様) l エムポックス疑い例やエムポックス患者は、可能な限りサージカルマスクを着用し、水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する。
l シーツや枕カバー(ワタキューセイモア)は、一次消毒を実施しなければ洗濯に出せないため、ディスポーザブル製品を使用する。 l 病院所有品と入院セットレンタル品(南九イリョー)の洗濯物の出し方は、別紙参照する。 l 患者が使用した後の洗濯物は、個人防護具を着用して自身の粘膜に触れないように運搬する。取り扱った後は必ず手指衛生を行う。
l 海外から、検体採取時の針刺し事故による感染事例が複数報告されていることから、医療従事者は特に検体採取時における感染対策に注意する必要がある。 l 特に皮膚病変の穿刺時の針刺し事故による感染事例が散発されていることから、皮膚病変が固い場合などは、無理に穿刺を行わないことも大切である。 l 確定例のみならず、疑い例の検体採取時にも注意が必要である。 l 万が一、針刺し事故を起こしてしまった場合は、直ぐに洗浄を行い、感染制御部へ報告する。感染制御部は天然痘ワクチンの曝露後接種に関する臨床研究への参加について最寄りの保健所に相談する。 l エムポックス症例が使用した病室内で手が触れる部分(トイレの便座、椅子の座面、携帯電話、お風呂など)からウイルスが検出されたことから、医療従事者は適切な感染防止対策を講じる必要がある。
l 隔離は全ての皮疹が痂皮となり、全ての痂皮が剥がれ落ちて無くなるまで(概ね21日間程度)実施する |
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■行政への連絡等 |
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保健所への届出を参照 診断した主治医は、届出用紙を医務課医療安全係(内線6847)にメッセンジャー便で送り、コピーした用紙をカルテにスキャンして保存する。医務課は感染症サーベイランスシステムにより保健所に届出を行い、感染制御部に連絡する。主治医が直接保健所に送った場合は、のちに医務課にも届出用紙を送る。 |
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■患者検体の取り扱い |
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採血等の検体はスピッツをZiplocにいれ密封し、搬送容器に入れて搬送する |
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■消毒薬の選択 |
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消毒用エタノール等 |
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