パッケージとは?
平成27年10月に「看護師の特定行為に係る研修制度」が施行された当時は、特定行為区分単位で研修を受ける形でした。
平成31年4月に厚生労働省令の改正により、「在宅・慢性期領域」「外科術後病棟管理領域」「術中麻酔管理領域」ができました。またその後に、「救急領域」「外科系基本領域」「集中治療領域」も追加されました。これは、制度開始から6年経過しても修了生は約4393名(令和3年9月現在)であり、目標とする修了生10万人は現実的に難しいことや、地域包括ケア推進・医師の働き方改革等のために特定行為研修を修了した看護師を増やすことは喫緊の課題であることから研修を受けやすいようにとパッケージ化がすすめられました。
パッケージ化の利点としては、今までの研修では「特定行為区分」ごとの研修しか認められておりませんでしたが、パッケージの中身に限り「特定行為」のみ研修を受けることができます。
パッケージは6領域あります
在宅・慢性期領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
| ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 |
| 膀胱ろうカテーテルの交換 | |
| 創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 |
| 創傷に対する陰圧閉鎖療法 | |
| 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 |
※
は免除される特定行為
外科術後病棟管理領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
| 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
| 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
| 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
| 人工呼吸器からの離脱 | |
| 呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
| 胸腔ドレーン管理関連 | 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 |
| 胸腔ドレーンの抜去 | |
| 腹腔ドレーン管理関連 | 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む) |
| 栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル 管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
| 栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 | 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
| 創部ドレーン管理関連 | 創部ドレーンの抜去 |
| 動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
| 橈骨動脈ラインの確保 | |
| 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 | |
| 術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
| 循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 |
| 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 | |
| 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※
は免除される特定行為
術中麻酔管理領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
| 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
| 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
| 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
| 人工呼吸器からの離脱 | |
| 動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
| 橈骨動脈ラインの確保 | |
| 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 | |
| 術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
| 循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 |
| 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 | |
| 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※
は免除される特定行為
救急領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
| 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
| 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
| 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
| 人工呼吸器からの離脱 | |
| 動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
| 橈骨動脈ラインの確保 | |
| 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 | |
| 精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | 抗けいれん剤の臨時の投与 |
| 抗精神病薬の臨時の投与 | |
| 抗不安薬の臨時の投与 |
※
は免除される特定行為
外科系基本領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 栄養に係るカテーテ ル管理(中心静脈カ テーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
| 創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血 流のない壊死組織の除去 |
| >創傷に対する陰圧閉鎖療法 | |
| 創部ドレーン管理関 連 | 創部ドレーンの抜去 |
| 動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
| >橈骨動脈ラインの確保 | |
| 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 | |
| 感染に係る薬剤投与 関連 | 感染徴候がある者に対する薬剤の臨 時の投与 |
| 術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投 与及び投与量の調整 |
※
は免除される特定行為
集中治療領域パッケージ
| 特定行為区分 | 特定行為 |
|---|---|
| 呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
| 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
| 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
| 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
| 人工呼吸器からの離脱 | |
| 循環器関連 | 一時的ペースメーカの操作及び管理 |
| 一時的ペースメーカリードの抜去 | |
| 経皮的心肺補助装置の操作及び管理 | |
| 大動脈内バルーンパンピングからの 離脱を行うときの補助の頻度の調整 | |
| 栄養に係るカテーテ ル管理(中心静脈カ テーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
| 動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
| 橈骨動脈ラインの確保 | |
| 循環動態に係る薬剤 投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量 の調整 |
| 持続点滴中のナトリウム、カリウム 又はクロールの投与量の調整 | |
| 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸 液の投与量の調整 | |
| 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
※
は免除される特定行為
パッケージ化は研修希望者にとっては、研修時間数が少なくなるメリットがありますが、特定行為区分のみの研修を希望する場合、指定研修機関が開講していないと研修を受けられないデメリットがあります。
鹿児島大学病院看護師特定行為研修センターでは、令和元年度(平成31年度)までは8区分の特定行為研修を実施していましたが、令和2年度からパッケージ研修を開始し、現在3つのパッケージ研修を行っています。
在宅・慢性期領域パッケージで免除される特定行為(「創傷管理関連」の「創傷に対する陰圧閉鎖療法」、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」)については研修を実施しないことになっています。また外科術後病棟管理領域パッケージや術中麻酔管理領域パッケージも同様に免除される特定行為について研修を実施しないことになっています。
研修時間数を少なくできるメリットと、特定行為を受講できないデメリットを検討しつつ今後の研修を計画したいと思います。

