鹿児島大学病院の特定行為研修の特色

研修を修了した看護師にできること

呼吸器(気道確保に係るもの)関連

【脱水を繰り返すAさんの例】

研修を受けるとこのように変わります!

研修受講前だと

【医師】→【看護師】→【看護師】→【医師】→【看護師】→【看護師】

研修受講後「特定行為」を実施!

【医師】→【看護師】

「研修を修了した看護師にできること」は手順書に沿った特定行為を医師の包括的指示の下に行えることです。事前に手順書による指示があれば、上記のように医師に連絡し指示を受ける工程がなくなり、患者さんの状態にタイムリーに対応できるようになります。*


【例】特定行為の実施場面(イメージ)

呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連

【症例】

肺炎の治療目的で挿管・人工呼吸器管理中、抗菌薬投与により酸素化の改善が見られてきており、人工呼吸器からの離脱を考慮している。

arrow

【手順書】

  1. 侵襲的陽圧換気の設定の変更
    酸素や二酸化炭素が指示の範囲になるように人工呼吸器の設定を変更。
  2. 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静剤の投与量の調整
    あらかじめ設定された鎮静スケールになるように鎮静剤を調整。
  3. 人工呼吸器からの離脱
    あらかじめ設定された自発覚醒トライアル・自発呼吸トライアルに従って人工呼吸器からの離脱を行う。

別の特定行為「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」で考えてみると、事前に手順書による指示があれば、上記のように研修を修了した看護師が呼吸器の設定を患者さんの状態に合わせて変更することが可能になります。
医師は外来や手術などがあり、一人の患者さんに長い時間寄り添うことは難しい現状です。研修を修了した看護師が加わることにより、今まで医師が行っていた医行為(特定行為)を実施することができます。24時間患者さんに寄り添う看護師だからこそ呼吸器設定変更をタイムリーに実施でき、きめ細やかな対応をすることができます。*

*これらの行為は「看護師の特定行為研修制度」を修了することによって予想される内容であって、これらの内容の実現のためには医療機関の十分な協力があること、安全体制を確保されていることが必要となります。


これからの課題

平成27年10月に施行されたばかりの制度であることや、研修修了生がまだ少ないことからまだまだ「こんな活動ができるようになります!!」といった具体的な例を挙げることは難しいです。更に特定行為は修了生が所属する医療施設で活動を検討することになっていることも事例を挙げることが難しい要因となっています。今後の修了生の活動次第で臨床で活かす幅が出てくると考えられます。
しかし、研修を受けようとする方にとっては具体的に何ができるようになり、何が変わるのかは知りたいところであると考えます。従って、現状の制度を考慮した上で予想される活動について検討します。

1.包括的指示の下、手順書を用いて特定行為を行うということ

看護師の業務の中で、「呼吸器設定の変更」や「持続点滴の調整」などは具体的な指示の下、実施している施設が多いのではないかと思います。「○○になったら設定を○○あげる」「○○以下の場合、○○に変更する」など。手順書に基づく特定行為を実施する場合には、この内容が包括的内容に変わります。しかし、チームで動く看護師の中に「特別に特定行為ができるひと」がチームの中に一人いることにメリットはあまりないようにも感じます。このことに対して、厚生労働省は特定行為が普及するよう2025年までに修了生を10万人育成する目標を掲げています。特定行為導入の初期は常に看護師のチームの中に一人特定行為を行える看護師を配置することは困難なため、各医療機関の中でシステムを作って特定行為を活かす方法を検討しなければなりません。

2.手順書は必ず医師が診察した後に指示を出し、記載されるべき項目が決まっていること。特定行為は手順書に基づいて行うこと

ある患者が突然状態が変化した場合は、普段と同じように医師へ報告し対応を依頼します。つまり、特定行為は予想外の出来事は対象外となり特定行為の実施はできません。手順書にある「患者の症状の範囲」は各医療機関が設定することとなっているため、どの程度の症状の範囲を「特定行為を実施してもよい範囲」にするかがポイントとなります。この「範囲」を狭めると特定行為研修の内容が活かされないように感じますし、広げすぎると医療安全上の問題点が出てくるのではないかと考えます。各医療機関が特定行為をどのように活用するかを十分に検討して、より良い医療を提供できるようなシステム作りが必要になります。

Back to Top