初期臨床研修を振り返って

鹿児島大学病院「桜島」プログラム2年目初期臨床研修医

 鹿児島大学病院桜島プログラムの新たな試みとして, 今年度から始まった聖路加国際病院での救急診療研修。この貴重なプログラムの初めての経験者として, 6・7月を聖路加国際病院で研修させていただき, この2ヶ月間は救急外来を担当しました。私はこの救急以外の期間を全て大学病院で過ごしており,これまで外来の患者さんに接する機会がほとんどありませんでした。そんな私にとって,限られた時間の中で検査を組み立て診断をつけ, 治療をしていく, という当たり前のような流れさえ, とても新鮮であり興味深いものでした。

 

 聖路加病院での研修開始当初は, 救急搬送されて来た患者さんが重症だと思い込んでしまう故にこちらにばかりに気がいってしまい,さらに処理能力もない私にとっては一人の患者さんの対応に精一杯でした。しかし救急搬送される患者さんの中にも, 症状は強くとも緊急性のない方もおられるし, 逆に歩いて来院された方の中に重症が隠れている事もあります。たとえ救急車で来院されようが, さらに緊急性が疑われる患者さんがいれば, 当然救急隊とストレッチャーが何台も廊下で待っている光景も生まれ, 時には「わざわざ救急車で来ているのに」と苦情が出る事さえありました。しかしそういったうわべに惑わされずに, 自分の目で診て判断しトリアージしていく指導医の先生方はとても格好良く, 私も少しでも近づけたらと思いながら無我夢中で研修を送った期間でもありました。2ヶ月間ではそんな先生方の足下にも及びませんでしたが, 大切な姿勢を教えていただきました。

 

 私は関東の大学出身者ですが, 桜島プログラムの特徴はその「幅広さ」にあると思います。鹿児島大学病院での研修が始まった1年目の4月, 外来を受診される患者さんを拝見してまず驚いた事は, 県内唯一の大学病院という環境から離島の方々が泊りがけで大学病院を受診する現状があるという事でした。いわば県民にとっては最後の砦である鹿大病院ですから, 入院治療においても, 専門性が高く高度な医療を必要とする方と多く出会いました。一方で猪の生肉摂取で肺吸虫症を発症した患者さんや農作業中に眼外傷を負った患者さんなど, 大学というより鹿児島の土地ならではの症例であるように感じた患者さんにも多く出会いました。聖路加病院ではcommon disease, 中でも緊急性の高いものからそうでない症例まで経験でき, 私の研修生活もまさに, 桜島プログラムならではの「幅広い」経験をさせていただいた1年半でした。このプログラムを実現させてくださった全てのスタッフの皆様に感謝しつつ, 残りの研修生活もさらに充実したものとなるよう励みたいと思います。

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