医療情報部は、総合病院情報システムTHINK(Total Hospital INformation system of Kagoshima university)の運営・管理を行っている部門です。

THINKの沿革

1983年12月 汎用コンピュータACOS550導入
1984年1月 医事システム稼働(パッケージ)
1984年4月 病名登録システム稼働(独自開発)
1984年8月 処方オーダリングシステム稼働(独自開発)
1984年10月 注射オーダリングシステム稼働(独自開発)
1985年7月 検査オーダリングシステム稼働(独自開発)
1985年7月 病棟システム稼働(独自開発)
1986年5月 放射線オーダリングシステム稼働(独自開発)
1987年11月 看護システム稼働(独自開発)
1988年10月 栄養システム稼働(独自開発)
1990年2月 汎用コンピュータACOS630MP導入
1992年9月 物流システム稼働(独自開発)
1992年10月 輸血オーダリングシステム稼働(独自開発)
1993年9月 リハビリテーションオーダ稼働(独自開発)
1993年9月 物流医事請求システム稼働(独自開発)
1995年1月 汎用コンピュータACOS3600/30導入
1996年10月 栄養システム機能強化
1997年9月 手術オーダリングシステム稼働(独自開発)
1998年7月 病院データウェアハウス(DWH)の稼働(独自開発)
1999年6月 病院経営分析システムの稼働(独自開発)
2000年5月 リスクマネジメントシステムの稼働(独自開発)
輸血実施直前実施入力システム、インシデントレポーティングシステム
2001年1月 クライアント・サーバ型システム(PC-ORDERING-2000)へ移行(パッケージ)
2002年6月 DPC様式調査システム稼働(独自開発)
2003年3月 DPCオーダリングシステム稼働(独自開発)
2003年4月 細菌部門システムの稼働
2003年10月 臓器別診療科再編・医科歯科病院ID統合
2004年2月 DPCBANKシステムの稼働(独自開発)
2004年4月 病院管理会計システム等の開発(独自開発)
2004年4月 外注検査システムの稼働
2005年4月 生理検査システムとのWeb連携
2006年1月 PC-ORDERING-ADへ移行(パッケージ)
2006年4月 ITKarteシステムの稼働(独自開発)
2006年4月 放射線画像システムフィルムレス化へ移行
2006年10月 e-kanja記録システム(電子患者記録システム)稼働(独自開発)
2008年10月 医学管理料なびシステム稼働
2009年2月 DPCナレッジシステム稼働
2009年4月 麻酔記録管理システム稼働
2009年4月 ICUシステム稼働
2011年4月 病理診断システム稼働
2012年1月 電子カルテシステム(MegaOak HR)への移行(パッケージ)
医科歯科各種サーバの統合へ
2012年3月 電子指示システム(内服薬・外用薬・注射薬)の稼働(パッケージ)
2013年3月 電子指示システムの拡張(独自開発)

医療情報部組織図

医療情報部組織図

診療録管理・診療データ管理

 電子カルテ以前の紙媒体の診療録管理および電子カルテ以降の紙媒体の諸記録の管理を行う。診療科、部門からの閲覧要望に迅速、正確に対応する。診療情報管理委員会で決められた保存期間を過ぎた診療記録の安全な廃棄を行う。

 診療情報管理委員会で決まった監査マニュアルをもとに、電子カルテに入力されているサマリや手術記録等の監査を行い、診療記録の精度を上げるよう努める。また、診療情報管理委員会で専門化による横断的な監査(ピアレビュー)を行い、監査結果をもとに診療記録の改善を図る。

 診療科が作成したサマリーをもとに、ICDコーディングを行い、疾病統計の作成を行う。また、様式調査の病名とサマリーの整合性を確認し、様式調査の精度向上に努める。

がん登録

 都道府県がん診療連携拠点病院として、がん患者さんの診断・治療のサポート体制を確立していく。鹿児島県内のがん診療連携拠点病院、がん診療指定病院に対し、がん登録データの精度向上を目的とし、研修会を企画開催する。精度の高いがん登録、予後調査が遂行できるよう医師を支援する。

クリニカルパス導入・品質管理

 電子クリニカルパスの安定的な運用を支援し、併せて医療安全や病院経営の健全化に貢献することを目的としてパスの品質管理を行う。クリティカルパスは、DPCデータをの実績と診療ガイドラインをもとに提案し、チームで作成したクリティカルパスは、クリティカルパス委員会で承認する。

DPC精度管理

 適切なDPCデータを提出することは、DPC対象病院の条件の一つであり、DPCの精度は、病院収入やマネジメントに影響を及ぼすようになった。このDPCコーディングの精緻化について医師を支援する。登録病名のチェック(電算レセプト標準マスタの未コード化傷病名のチェック、留意すべきICDコード)等を行い、様式調査やレセプト審査等に関連する医師の業務負担の軽減を図る。また、医療機関に義務付けられているDPCコーディング委員会を年4回以上開催する。

鹿児島大学病院における医療情報部のこれまでの取り組み

 トレンドカネモノ情報ヒト
1984年
医事システム
  • 患者待ち時間の短縮
1992年
オーダリングシステム
オーダリングシステムの開発・導入 既存の国立大学病院では最初の取り組み
  • 膠着化した病院機能の改善
  • 院内コミュニケーションツール
  • リエンジニアリング
ハイタッチの実現 物流(医療請求)システム導入の効果 手術実施入力
  • 診療報酬請求漏れの防止
  • 病院機能の近代化
1998年
院内物流システム
物流・医事請求システムの開発・導入 徹底した部門在庫管理の実現
  • 院内を110数箇所の請求部署に分け、請求・入庫・出庫入力を行う
  • 各部署の在庫をオンラインで参照
  • 患者個人の消費まで追える
  • 医事請求に至らなかった特材の把握
  • バーコードの活用
1997年 手術オ-ダリングシステムの開発・導入
  • 手術に関する申し込み、スケジューリング、術中の実施入力など手術に関する一連のシステム化
院内を110数箇所の請求部署に分け、徹底した部門在庫管理の実現
  • バブル経済の崩壊
  • 医療経済の逼迫
  • 病院経営改善
2000年
病院DWH
病院データウェアハウス(DWH)の開発・導入 従来の業務系システムと情報系システムの合理的な使い分け
  • 蓄積されている膨大な過去データの迅速な参照機能の開発
  • データの二次利用としての各種分析
  • 病院パイロット事業として、病院経営分析システムの開発に着手
1患者(1ベッド)1日当たりの収支のバランス 病院データウェアハウスの連携
  • 2000年問題対応
データ
マイニング
リスクマネジメントシステムの開発・導入

  • 輸血製剤の患者投与直前入力の実現
  • インシデントレポートシステム
  • 異型輸血の防止
  • 事故報告書(懲罰モデル)からシステム志向のアプローチへ
  • システム支援への期待と限界を見極める
棚卸し実施時間と在庫金額の推移 懲罰モデルではなくシステム指向のアプローチへ

輸血製剤の患者投与直前入力の実施
  • 2000年問題対応
2003年 特定機能病院へDPCの導入
  • 患者別原価計算
2004年 ・国立大学法人化
・管理会計システムの開発
・財務会計システムの導入
  • 毎月末の棚卸の徹底
  • 物流システムの機能強化
  • 管理会計と財務会計における物流データの活用
正確な利益の把握に大切な棚卸しを支援する プロブレム管理
  • DPC別原価計算
2006年
電子カルテ
電子カルテシステム(e-kanja記録システム)の開発・導入
  • 電子患者記録システムの実現
  • POSに基づくPOMR
  • 全診療科外来・病棟において,2007年7月より全面稼働
さらなる効率化と質保証 参照と検索機能の充実を意図した電子患者記録
2008年地域連携 クラーク(医療秘書)の院内養成、導入
  • 医師の事務的作業の軽減
  • 診療現場における適正な診療報酬請求の実現
  • 看護業務の事務作業を軽減し、診療の補助を充実する
2010年 国立大学法人の第2期中期目標・中期計画に基づく病院経営のあり方、経営改善への取組み等への積極的関与 院内のクラーク・補助者業務の整理・統合へ

医療ICTと医療情報部門の役割

病院が行動を起こす際の 意思決定に必要なデータや システム支援へとシフト

現在の当院における医療情報部の主な役割
  • 病院情報システム(THINK)の開発、運用、メンテナンス全般
  • 病院情報システムに係る知識及び技術の普及に関すること
  • 病院情報システムに蓄積されたデータ利用による病院経営分析支援
  • 診療情報管理士による診療情報の精度管理
  • 医療クラーク(医療秘書)の教育、管理
  • その他(よろず処理承り)

院内のクラーク、補助業務の整理・統合へ
目的
  1. 最小限の人数で最大の効果をあげる。
  2. 医療技術の進歩,診療報酬改定などの医療制度改革に対応できるよう、クラークや補助者が適宜,教育指導を受けられるようにする。
  3. クラークや補助者と病院職員が常に良い緊張関係を維持する。
方法
  1. クラークは診療科や病棟に固定配置ではなく、医療情報部づけにした。
  2. 主な業務部署として診療科や病棟に配置した。
  3. 曜日や時間帯によって業務量に差が生じた場合は、医療情報部の判断でクラークの適正配置が可能という運用を実現した。
  4. 診療科からの抵抗も見られたが、派遣法上の理由やクラークが休みを取得した場合の対応のためにも必要であるという理由で理解を求めた。
  5. 導入当初から、医療情報部と診療科が定期的に話し合いを持ち、クラークに行ってもらいたい業務について検討を行いながら、徐々に業務拡大を図っていった。
  6. 基本的に現場(診療科・病棟・医務課等)からのクラークに関する要望・クレームは医療情報部が受け、必要に応じて、医療情報部から委託業者あるいはクラーク本人に指導を行っている。
  7. クラークの出退勤・休みなどの管理は医療情報部で行い、早退・休み等で業務に支障が出た場合は、医療情報部で全体業務量を把握し、応援体制が取れるように調整している。
  8. 月1回の割合で外来・病棟別にクラークを集め、定例会を開催し、クラークの意見・要望等を収集し、必要に応じて診療科や病棟へ伝えている。
今では

クラーク及びクラークの業務もすっかり定着し、クラークを活用した次なる取り組みを目指している。

クラーク導入による対費用効果

しかし、クラークの導入が病院にどのようなメリットをもたらすか未知数の状態からのスタートであった。

クラーク導入に要する経費を上回る増収を達成する

外来クラークに対しては医学管理料の請求漏れ防止、病棟クラークに対してはDPCの精緻化と適正な診療報酬の実現。

クラーク導入に要する経費を上回る増収を達成する

目標値を設定し、常に成果を数値で測定する。診療報酬の改善は、病院職員の安心に繋がり、クラークの更なる動機づけに繋がっている。

おカネの次は・・・

電子カルテ(e-kanja記録システム)を利用した診断書作成支援。退院時サマリ作成支援、入院診療計画書作成支援など、医師の指示の下にクラークが代行入力を行い、医師の事務作業の補助領域を拡大していく。

クラークが生き生きと働ける職場環境は

クラーク自身が知的作業に関与でき、自分の役割が病院経営改善に貢献できているという自負心が更なる向上の動機づけに繋がっている。ある者は診療情報管理士、ある者は医療事務の通信教育を始めるなど、クラークとして働き始めたことが契機となり、自己能力開発に積極的に取り組み始めた。