希少がん

希少がんの定義は各国様々であり統一されたものはありませんが、年間人口10万人当たり6人程度の罹患率のがんと理解してもよいものと思われます。希少がんには200種類近くもの異なるがんが含まれており、その内訳は、骨軟部肉腫、悪性脳腫瘍、皮膚腫瘍、眼腫瘍、悪性中皮腫、副腎がん、神経内分泌腫瘍、原発不明がんなど実に多岐にわたります。

希少がんの予防・診断・治療と一般的ながんのそれらとの間で、共通する点は数多くあります。しかし症例数が少ないことによる特殊な課題は存在します。たとえば、症例数が極端に少ないので検診には向かないこと、希少がん医療に関わる医師と医療機関が不足していること、病理診断が難しいこと、治療薬開発に結びつく臨床研究を進める体制が不足していること、市場規模が小さいので製薬企業の関心が得られにくいことが指摘されています。

希少がんにおいては、既存の薬剤の適応拡大はとりわけ現実的だと考えられます。希少がんでは患者さんの数が少ないため、新しい抗がん薬を最初から開発することは難しいかもしれません。一方、チロシンキナーゼと呼ばれるがん遺伝子の異常、浸潤や転移を来す分子機構はおそらくあらゆるがん種である程度は共通なので、すでに他のがんで承認されている抗がん薬が奏効する希少がんは少なくないと考えられています。

世界で最初に開発された分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬、イマチニブ は慢性骨髄性白血病の特効薬です。またこのお薬は、消化管間質腫瘍 (GIST; ジストと呼ばれている肉腫です。) に対して、保険承認が得られた治療薬でもあります。この様に既存の分子標的治療薬は、希少がんを含めて臓器横断的に効果がある可能性を持っていると言えるでしょう。

期待されている免疫チェックポイント阻害薬ですが、2018年8月から、「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」に対してもオプジーボの使用が可能となっています。

一方、免疫チェックポイント阻害薬は、バイオマーカー検索も含めて、まだまだ希少がんには発展途上で、骨軟部肉腫には効果が得られにくく、期待できるのは一部の肉腫であることも示され始めています (Lancet Oncol 2017; 18: 1493–1501)。

原発不明がん

がんは、ある臓器で正常な細胞に遺伝子に変化がおこることで異常な細胞へと変化し、
規律を守られずに増加し、浸潤・転移を起こし身体の中に広がっていく事をいいます。
がんが発生した臓器を原発部位・原発巣といいます。原発部位から離れた部位で進展したがんを転移巣といいます。
がんの診断は、例えば大腸からできたものを大腸がんというように、原発部位にならって付けられます。大腸にできたがんが肝臓に移った場合は、大腸がんの肝転移と診断され、その転移巣は大腸がんの性質を表します。

がんの確定診断には、がんになった部位から細胞や組織を一部とって顕微鏡で調べること(病理診断)が必要です。検査により原発部位が特定されることがほとんどですが、中には転移巣が先に見つかり、病理診断でがんと診断はされても、原発部位がわからないものもあります。これを「原発不明がん」といいます。

原発不明がんは、原発臓器がわからないため、治療方法が確立していません。
腫瘍センターでは、近年話題となっている、ゲノム医療(2018年10月現在、先進医療と自費診療の2本立てのがんパネル検査の提供。詳細はHPへリンク)を利用して原発不明がんの診断と治療に光を当てていきたいと考えています。

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