大腸がん

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担当診療科
消化器外科(Ⅰ)

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

消化器外科(Ⅰ)で取り扱っているがん

大腸がんは、大腸に発生し、細胞が異常に増えて塊になった悪性腫瘍です(図1)。周囲の組織に浸潤や転移を起こす能力があり、日本でも死亡率が増加しています(図2)。このような大腸がんに対し、当科だけで治療するのではなく、いくつもの診療科やスタッフが関わり、チームとして治療する集学的治療を行っています(図2)。

図1

図1 大腸癌とは大腸(結腸、直腸)に発生するがん腫

図2

図2 参照:厚生労働省 平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況:悪性新生物の主な部位別死亡率
(人口10万対)の年次推移
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai16/dl/gaikyou28.pdf(13ページ/図8))

つまり、消化器外科だけでなく、消化器内科、放射線科、腫瘍神経科や薬剤師、化学療法チーム、緩和ケアチームなどの他職種と連携をとり包括的な医療提供を行っています。また、医療ソーシャルワーカーは、効果的で効率的に援助を行うため、病院全体のシステムと連動して他の病院や施設などとの連携し、退院後の患者、ご家族の療養、生活を支援しています(図3)。

図3 大腸がんの集学的治療(チーム医療)

図3

2.診断

消化器外科(Ⅰ)における診断体制

早期の段階では自覚症状はありません。大腸がんの主な症状は、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、残便感、腹満、腹痛、貧血、体重減少などがあります。中でも血便に関しては、痔と思いこみ放置する人が多いようですので、早めに医療機関を受診することが大切です。大腸がんの発見には、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査が有効です。大腸がんの診断には、大腸を内視鏡で直接観察する大腸内視鏡検査が有効で、ポリープや腫瘍から組織を採取できます。組織の病理検査で、がん細胞が検出された場合は、大腸がんと診断されます。CT検査(図4)、MRI検査(図5)、PET検査(図6)は、癌の進展や広がりを評価し、病期(がんのステージ)を診断します。リンパ節転移を伴わない早期がんや深達度が筋層までのがんはステージI、リンパ節転移や遠隔転移を伴わない進行がんはステージII、リンパ節転移を伴うものはステージIII、遠隔転移を伴うものはステージIVと診断されます。

図4 CT検査

図4 CT検査

図5 MRI検査

図5 MRI検査

図6 PET検査

図6 PET検査

3.治療

消化器外科(Ⅰ)で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

大腸がんの治療法には、内視鏡治療、手術治療、化学療法、放射線療法(化学放射線療法)などがあります。当科では主に手術治療および化学療法、化学放射線療法を行っています。
手術治療は、がんのとり残しのないように、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節を切除する治療法です。癌の浸潤が周囲臓器にまでおよんでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除した後は、残った腸管をつなぎあわせます。腸管のつなぎあわせができない場合は、人工肛門が必要です。当科では、大腸がんの手術療法の約80%を内視鏡外科手術で行っています(図7)。内視鏡外科手術の利点としては、傷が小さい、創感染が少ない、腸閉塞が少ない、回復が早いなどあります。また、拡大視効果により、出血の少ない手術と精緻なリンパ節切除が可能であることも大きな特徴です(図8)。

図7 内視鏡外科手術に術中風景

図7 内視鏡外科手術に術中風景

図8 腹腔内の内視鏡像

図8 腹腔内の内視鏡像

4.薬物治療

消化器外科(Ⅰ)で取り扱う治療(薬物治療)

がんに作用する抗がん剤を用いて、がん細胞を死滅させたり、がんが大きくなるのを抑えたりする治療法で、注射する方法や内服する方法です。化学療法チームと一緒になって診療を行っています。当科では腫瘍径の大きいもの、リンパ節転移の高度のものなどに対し、術前化学療法を行っています。腫瘍を小さくして切除することによって治療効果が期待されるからです。図9は直腸がんに対し術前化学療法を行って手術を行った症例です。腫瘍は著明に縮小し安全な手術を行うことができました。また、切除不能進行大腸がんに対する化学療法も積極的に行っており、手術が可能となった症例も多く経験するようになりました。

化学療法前と後

図9

5.放射線治療

消化器外科(Ⅰ)で取り扱う治療(放射線療法)

放射線療法は、がん細胞のDNAを傷つけて細胞分裂を止める作用により腫瘍を縮小させる治療法です。当科では放射線科と協力して、直腸がん、肛門管がんに対し局所コントロール目的で化学療法と放射線治療を組み合わせた化学放射線療法を行っています。図10は肛門管がんに対し化学放射線療法を行って手術を行った症例です。腫瘍は著明に縮小し安全な手術を行うことができました。

図10

図10

6.先進医療、臨床研究、治験

当科では緩和ケアセンターと協力し、大腸がんの病気や治療に伴う心のつらさや不安、からだの痛みなどを早期に発見し、的確な評価と処置を行うことによって、苦痛を予防したり和らげたり、患者さんやご家族のQOLを改善する努力を行っています。

先進医療、臨床研究、治験

消化器外科(Ⅰ)でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

当科で行っている高度医療、最新の治療として肛門温存手術、経肛門的直腸間膜全切除術があります(図11)。
肛門温存手術は肛門括約筋の一部を切除して根治性を保ちつつ、肛門を温存する手術です。直腸癌ととともに内肛門括約筋の一部を切除して肛門を温存します。この手術の問題点は、再発が増えないか、排便障害により日常生活が侵されないか、という点です。大腸癌研究会ではデータを集積、解析して、ともに現時点で大きな問題はないことがわかってきましたが、失禁の増加など排便の様子は手術前と大きく変わります。
経肛門的直腸間膜全切除術は、肛門側から腹腔側に直腸を受動する新しい術式で、腹腔鏡下直腸癌手術におけるnewrevolutionとされています。海外では急速に普及しており、日本でも導入が進んでいます。当科では2014年11月に高難度新規医療技術に準じてく導入し、現在60例を超える症例数となりました。本術式により自験例における手術時間が2時間短縮し、患者さんの負担軽減に貢献しています。日本では実績の少ない手術術式なので今後、さらなる症例の集積と評価が必要です。

図11

図11 肛門温存手術と経肛門的直腸間膜全切除術

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