卵巣・卵管・腹膜がん

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担当診療科
産科・婦人科

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

産科・婦人科で取り扱っているがん

左右の卵巣(母指頭大)は子宮体部からの靱帯によって支えられています。卵巣を形づくる主な組織には、卵巣の表面を覆っている表層上皮、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンを産生する性索間質などがあります。卵巣腫瘍はこれらのすべてから発生します。その大半は表層上皮性、間質性腫瘍で、このうちの悪性の腫瘍を通常「卵巣がん」と呼んでいます。腫瘍は良性と悪性(がん)に分けられますが、卵巣腫瘍の場合はさらに、良性と悪性の中間的な性格をもつ境界悪性腫瘍があり、これも卵巣腫瘍の多種多様性を表わしている証です。卵巣がんは種々の遺伝子変異の積み重ねで発生しますが、直接の原因は不明です。しかし最近では一部のがんにおいて遺伝的な要因が関与していることがわかり(遺伝性乳がん卵巣がん)、近年乳がん卵巣がん家系では卵巣がんの発生予防のひとつとして、卵巣、卵管の摘出術が行われることがあります。

2.診断

産科・婦人科における診断体制

卵巣は骨盤内の深いところにあるため、がんの診断、ならびにその広がりを手術前に正確に知ることは難しく、多くの場合、手術により腹腔内を詳しく観察し摘出した腫瘍を検査することではじめて明らかになります。手術前には、腹部の触診や内診、超音波断層法検査やCT、MRIなどの画像検査を行い、血液検査による腫瘍マーカーの測定も行います。手術中には腹腔内の詳細な検索と後腹膜リンパ節転移の有無を確認します。当科では複数の婦人科腫瘍専門医がおり、患者さんごとに最適な治療が受けられる様に診断、治療を行なっています。

3.治療

産科・婦人科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

卵巣がんの場合は、いずれの進行期が予想されても、最初に手術を行ってできるだけがんを取り除き、そののち化学療法を追加するのが基本です。しかし、がんが完全に摘出できない場合には化学療法でがんを小さくしたのちに手術を行う場合があります。また、がんが卵巣にとどまっているように見えている場合でも、腹腔洗浄細胞診、腹腔内各所の生検や後腹膜リンパ節郭清を行い、がんの広がりを正確に判断します。
卵巣がんが疑われる場合は、まず開腹手術を行って卵巣腫瘍を摘出します。このときに行われる手術は「付属器切除術」といい、腫瘍ができている側の卵巣と卵管をすべて摘出します。術中迅速病理組織検査で良性と判断された場合には、付属器切除のみで治療を終了します。しかし、境界悪性あるいは悪性と判断された場合、さらに手術が続きます。ただし、術中迅速病理組織検査を行わずに永久標本病理組織検査による最終診断を待ってから、再手術を行う場合もあります。境界悪性の場合には、卵巣がんに準じた手術を行います。悪性の場合の手術は、「両側付属器摘出術+子宮全摘出術+大網切除術」を基本とし、これに加えて腹腔細胞診、腹腔内各所の生検、後腹膜リンパ節郭清(骨盤リンパ節郭清と傍大動脈リンパ節を摘出すること)を行って、がんの広がり具合を診断します。
手術後の病理検査の結果に応じて、また症例によっては術前に抗がん剤(パクリタキセルとカルボプラチン)や分子標的薬(ベバシズマブ)を組み合わせて化学療法を行います。

4.薬物治療

産科・婦人科で取り扱う治療(薬物治療)

卵巣がんに対する化学療法(抗がん剤治療)の標準治療は、パクリタキセルとカルボプラチンを点滴で投与するTC療法です。何らかの理由によりTC療法が投与できない場合には、ドセタキセルとカルボプラチンのDC療法が候補となります。また、分子標的薬のひとつであるべバシズマブは、化学療法と併用し、さらにその後も維持療法として用いることで再発のリスクを減らせることが期待されています。パクリタキセルやドセタキセルが投与できない全身状態不良の患者さん、高齢者にはシスプラチン単剤、カルボプラチン単剤の治療が考慮されることがあります。

5.放射線治療

産科・婦人科で取り扱う治療(放射線療法)

放射線治療は、卵巣がんでは初回の治療としては行われません。以前は手術後の治療のひとつでしたが、近年、卵巣がんでは化学療法のほうが効果が高いことがわかり、現在では、がんが脳に転移した場合など限られた場合にのみ放射線治療が行われます。

先進医療、臨床研究、治験

産科・婦人科でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

当科では卵巣がんに関する様々な臨床試験を行なっています。当施設独自の臨床試験以外にも、国内臨床試験、国際共同臨床試験などを行なっています。全ての臨床試験は、当院の倫理委員会へ申請を行い、承認されています。対象となる患者さんそれぞれに十分に説明をして、同意をいただいています。
このように、常に最新・最良の治療を患者さんに提供できるよう心がけています。

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