原発性骨腫瘍、転移性骨腫瘍、軟部腫瘍

type11

担当診療科
整形外科・リウマチ科

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

整形外科・リウマチ科で取り扱っているがん

整形外科では、骨や軟部組織(筋肉、脂肪、神経、結合組織など)に発生した腫瘍の診療を行っています。特に悪性の骨軟部腫瘍の診断・手術・化学療法などの一貫した治療を行っている、県下で唯一の施設です。骨や軟部組織由来の腫瘍と、他の部位に発生したがんから転移した転移性骨腫瘍に大別されます(腫瘍の分類、疾患例は下表)。我々はこれらの疾患の診断、治療だけでなく新しい治療法の開発にも取り組み、開発した新しい薬の候補を用いた治験も行っています。

骨腫瘍(原発性骨腫瘍) 骨から発生した腫瘍
良性骨腫瘍:骨軟骨腫、内軟骨腫、軟骨芽細胞腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、非骨化性線維腫、線維性骨異形成、骨巨細胞腫、単純性骨嚢腫、動脈瘤様骨嚢腫、ランゲルハンス細胞組織球症(好酸球性肉芽腫)など
悪性骨腫瘍:骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、脊索腫、骨悪性リンパ腫、骨髄腫など
軟部腫瘍 軟部組織(筋肉、脂肪、神経など)から発生した腫瘍
良性軟部腫瘍:脂肪腫、線維腫、デスモイド型線維腫症(良性・悪性の中間型)、平滑筋腫、血管腫(静脈奇形)、神経鞘腫、神経線維腫、ガングリオン、類上皮嚢腫(粉瘤)など
悪性軟部腫瘍:脂肪肉腫、未分化多型肉腫(旧:悪性線維性組織球種)、線維肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍など
転移性骨腫瘍 がんが骨に転移してできた腫瘍(肺がん、乳がん、甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、胃がん、大腸がん、食道がん、子宮がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱癌、膵臓がん、胆管がんなどからの転移)

代表的な骨軟部腫瘍

2.診断

整形外科・リウマチ科における診断体制(腫瘍疾患診療グループ)

副診療科長(准教授) 永野 聡
特任准教授 瀬戸口啓夫
助教 佐々木裕美
医員 齋藤嘉信

3.治療

整形外科・リウマチ科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

良性骨腫瘍に対する治療 手術:腫瘍切除術、腫瘍掻爬術
良性軟部腫瘍に対する治療 手術:腫瘍切除術、腫瘍核出術(神経鞘腫)
悪性骨腫瘍に対する治療
  • 手術:腫瘍広範切除術(四肢発生では90%以上で患肢温存)
  • 再建術:人工関節を用いた再建術、自家処理骨(加熱処理、液体窒素処理)を用いた再建術、自家骨移植(血管柄付き腓骨移植などのマイクロサージェリーにも対応)、同種骨※ 移植
    ※当科が運営に携わっているNPO法人 鹿児島骨バンクを経由して提供
悪性軟部腫瘍に対する治療
  • 手術:腫瘍広範切除術(四肢発生では90%以上で患肢温存)
  • 再建術:植皮術、筋弁・皮弁術(当院には形成外科が無いため当科でマイクロサージェリーを含めた再建術も行います)

<h3>整形外科・リウマチ科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)</h3> <div class="table-responsive">

4.薬物治療

整形外科・リウマチ科で取り扱う治療(薬物治療)

悪性リンパ腫と診断され、組織型や病期が決定されるのと並行して治療方針を検討します。
悪性リンパ腫には急速に進行するアグレッシブリンパ腫とゆっくり進行するインドレントリンパ腫があり、インドレントリンパ腫の一部は無治療観察を行うことがあります。これはインドレントリンパ腫では、慢性リンパ性白血病の欄でも書きましたが、早期に化学療法を開始したとしても、腫れているリンパ節や腫瘤を小さくすることはできても、全体の治療成績を変えないとされているからです。
ステージ分類で限局期と進行期に大別し、進行期であれば全身化学療法を行いますが、限局期であれば放射線療法単独や全身化学療法の回数を減らし放射線療法を加える選択肢があります。悪性リンパ腫への治療には下記のようなものがあります。

化学療法(抗がん)剤 原発性悪性骨・軟部腫瘍のうち、円形細胞肉腫(ユーイング肉腫/原始神経外胚葉腫瘍,PNETや横紋筋肉腫)および骨肉腫、骨未分化多型肉腫に対しては術前、術後の多剤併用化学療法を行います。非円形細胞肉腫(脂肪肉腫、未分化多型肉腫、平滑筋肉腫など)は症例に応じて、アドリアマイシン、イフォスファミドを併用した補助的な化学療法を考慮します。
分子標的治療薬、
ほかの新規薬剤
  • パゾパニブ:血管新生に作用する複数の分子を阻害する(チロシンキナーゼ阻害)薬剤です。内服であり、外来でも継続が可能です。化学療法が無効な悪性軟部腫瘍が適応になっています。
  • トラべクテジン:海洋生物から単離された化合物であり、DNAに結合しがん細胞の増殖を抑制します。注射薬であり、中心静脈カテーテルから投与する薬剤です(手足の血管からは投与できません)。適応はパゾパニブと同様ですが、臨床試験の結果から、滑膜肉腫や粘液型脂肪肉腫など染色体転座を伴う軟部腫瘍に効果が期待されています。
  • エリブリン:やはり海洋生物から抽出された日本生まれの薬剤で、細胞分裂に重要な役割を持つ微小管という部分の働きを阻害することでがん細胞の増殖を抑制します。注射薬であり、3週間を1サイクルとして繰り返します。やはり悪性軟部腫瘍が適応であり、脂肪肉腫や平滑筋肉腫に特に効果が高いことが示されています。

5.放射線治療

整形外科・リウマチ科で取り扱う治療(放射線療法)

放射線治療 原発性悪性骨・軟部腫瘍に対しては、根治目的での放射線治療は通常行われず、手術と組み合わせた再発予防や、切除が不能な場合の緩和的な照射が行われます。例外的に、小円形細胞肉腫は放射線治療への感受性が高いので、手術の代わりとして放射線照射を行うことがあります。
転移性骨腫瘍においては、放射線治療は標準的に行われます。治療の対象となるのは、疼痛がある場合、骨折の危険性があり、手術と組み合わせて行う場合などです。
粒子線治療 通常、骨軟部に発生した腫瘍は放射線治療が効きにくいため、治癒を目的とした線量は副作用が大きく現実的には施行不能でした。粒子線は、その特性から周囲の正常組織への影響を少なくして高い線量が照射できるので、骨軟部の悪性腫瘍への効果が報告されています。当科の症例でも骨盤部の軟骨肉腫などで治療効果が見られています。2016年4月から、手術で切除不能な骨原発の悪性腫瘍は保険適応になりました。ただし、重粒子線(炭素線)だけであり、陽子線は適応になりません。当科ではメディポリス国際陽子線治療センター(陽子線)や九州国際重粒子がん治療センター(炭素線)と連携して治療を行っています。

6.先進医療、臨床研究、治験

緩和ケア 当科では鹿児島大学病院緩和ケアチームと連携して患者さんの痛みや心理的、身体的な問題に取り組んでいます。緩和ケアとは必ずしもがんが進行した時に行うものではなく、診断がつく前の不安な気持ちや治療を選択するときの迷いなど早期からかかわっていくものです。当科では外来の時点から必要があれば緩和ケアチームのスタッフと一緒に診療を行っています。
がん緩和治療 再発や転移など進行した骨軟部腫瘍の患者さんにおいて、化学療法、放射線治療、手術の適応がないと判断された場合は、苦痛を和らげる治療を中心に緩和的治療を行います。やはり緩和ケアチームと連携して変化する患者さんの病状に合わせた治療を行います。緩和ケア病棟をもつ医療機関や在宅医療をおこなっている医師との連携をとりながら、患者さん、ご家族のご希望に沿った治療を提供しています。

先進医療、臨床研究、治験

整形外科・リウマチ科でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

進行固形がんに対するウイルスベクターを用いた医師主導治験

当科と鹿児島大学大学院遺伝子治療再生医学講座の共同開発による、オリジナルのウイルスベクター(腫瘍溶解性ウイルス)を用いた、医師主導治験を行っています。Surv.m-CRA-1というこの治験製品はがん細胞のみを殺すような特長を持っています(下図)。

治験製品Surv.m-CRA-1の説明

現在は「治験」といって薬剤としての承認を目指した臨床試験を行っている段階で、鹿児島大学でのみ治験製品の投与ならびに安全性や効果の評価を行っています。参加には条件がありますので、下記のリンクから詳細をご覧ください。

オンコロ

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