白血病

type12

担当診療科
血液・膠原病内科

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

血液・膠原病内科で取り扱っているがん

血液・膠原病内科では、白血病を含む造血器腫瘍の診療を広く行っています。

2.診断

血液・膠原病内科における診断体制

血液検査で白血球数の異常(増加または減少)や貧血、血小板数減少を認め、血液中に異常細胞の出現を認めた場合には白血病が疑われます。白血病が疑われた場合は下記のような検査を行い確定診断します。

1.骨髄検査 腸骨から骨髄の採取(骨髄穿刺、骨髄生検)を行い、幼弱細胞(白血病細胞)の割合を評価します。20%を超えて増加を認めた場合に急性白血病と診断されます。
2.細胞学的検査 白血病には骨髄性白血病とリンパ性白血病があり、2者はさらにFAB分類やWHO分類という分類法で詳細に区別されています。ミエロペルオキシダーゼ染色やエステラーゼ染色といった特殊な染色法で染めた骨髄細胞を顕微鏡で観察し鑑別しています。
3.表面形質検査 フローサイトメーターという細胞の表面形質を測定する機械で白血病細胞を詳しく解析し、診断の補助としています。骨髄性白血病であればCD13やCD33、リンパ性白血病であればCD10やCD19などが陽性となります。
4.染色体・遺伝子検査 白血病の一部に特徴的な染色体異常が存在することが明らかになってきており、染色体異常を加えた新たな分類法や分子標的治療薬の開発が進んでいます。慢性骨髄性白血病や一部の急性リンパ性白血病では22番染色体上のBCRと9番染色体上のABLが転座結合することによるフィラデルフィア染色体が認められ、急性前骨髄球性白血病では17番染色体上のRARαと15番染色体上のPMLが転座結合することによるPML-RARA融合遺伝子が認められます。

3.治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

白血病は全身性の病気ですから、例外的な場合を除くと薬物療法が中心となります。

4.薬物治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(薬物治療)

白血病と診断され、さらに分類が決定されると治療方針が決まります。白血病には急速に進行する急性白血病とゆっくり進行する慢性白血病があり、さらにそれぞれ骨髄系細胞から発生する骨髄性白血病とリンパ系細胞から発生するリンパ性白血病に分けられます。慢性リンパ性白血病の一部では進行するまで無治療観察が行われることがありますが、急性白血病や慢性骨髄性白血病、症状を伴う慢性リンパ性白血病では下記のような治療を行っています。

1.化学療法 急性白血病では、白血病細胞の増殖抑制を目的として抗がん剤の投与を行います。白血病の治療には白血病細胞を減少させるための寛解導入療法と、白血病細胞をゼロに近づけより深い寛解状態を目指すための地固め・維持療法に分けられ、治癒を目指して半年から2年ほど治療を行います。強力な治療で副作用も多く出ますが、最大限の支持療法(吐き気の予防や感染症対策、輸血など)を行って、可能な限り決められた通りの治療を行います。慢性リンパ性白血病の一部では診断されてもすぐに治療を開始しないのは、現時点では早く治療を始めることが全体の治療成績を変えないことが分かっているからです。
2.分子標的治療 慢性骨髄性白血病や一部の急性リンパ性白血病では、22番染色体上のBCRと9番染色体上のABLが転座結合することによりフィラデルフィア染色体が形成され、染色体上のキメラ遺伝子bcr-ablの恒常的なチロシンキナーゼ活性化が起こっていることが、病気の本態であり非常に重要です。このチロシンキナーゼ活性を阻害する目的で開発された分子標的薬のイマチニブにより慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の生命予後は改善し、イマチニブに続くチロシンキナーゼ阻害薬が開発されています。特に慢性骨髄性白血病は、劇的な治療成績の改善が見られています。
3.分化誘導療法 急性前骨髄球性白血病は成熟した白血球へ分化する過程がPML-RARA融合遺伝子によって抑制されることで発症します。ビタミンA誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA)とタミバロテンは、白血病細胞の分化・成熟を誘導することで正常の白血球と同様の経過をたどり白血病細胞を死滅させることができます。
4.造血幹細胞移植 初発時に予後不良が予測される症例や、初回治療後の再発を認めた場合に造血幹細胞移植の必要性が判断されます。自身の造血幹細胞を用いる自家移植と、他人(血縁者、骨髄バンクドナー、臍帯血)の造血幹細胞を用いる同種移植があり、白血病では急性前骨髄球性白血病の初回再発を除きほとんどが同種移植になります。がん細胞を減らすことと造血幹細胞の拒絶を防ぐことを目的に大量抗がん剤や全身放射線照射を組み合わせて移植を行います。一般的な抗がん剤治療に比べ、造血幹細胞移植はその治療毒性や合併症の危険性が高いため、適応は若年者や合併症の少ない高齢者に限られており、安全に治療が行えるよう各症例にあわせて薬剤選択や用量調整を行っています。

5.先進医療、臨床研究、治験

急性白血病の一定の割合の患者さんは治癒のチャンスがあります。最大限の支持療法をしながら標準治療とされる強力な治療を行います。
一方、慢性リンパ性白血病は治癒を目指すことは難しいですが、生活の質を重視しながら、新たに開発された薬剤も使用しながら、治療を進めていくことになります。
しかし種々の治療を行っても治療がうまくいかない場合、また高齢などのために臓器機能の低下のために、化学療法のメリットに限界がある場合には、患者さんやご家族の方と相談しながら、緩和的な化学療法を含む治療を行います。その場合は、緩和ケアを積極的に実施している医療機関やご自宅近くの医療機関をコアにして、生活の質を重視していくことになります。

先進医療、臨床研究、治験

血液・膠原病内科でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)は1987年に設立された多施設による白血病臨床研究グループです。 より良い診断・治療法を開発し、白血病など造血器腫瘍の治癒率ならびに治療の質を向上させることを目指しています。当施設もそのメンバーとして、急性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群に対する、臨床試験を積極的に行い、よりよい治療法の開発に取り組んでいます。

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