リンパ腫

type12

担当診療科
血液・膠原病内科

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

血液・膠原病内科で取り扱っているがん

血液・膠原病内科では、リンパ腫を含む造血器腫瘍の診療を広く行っています。
特に西南日本に多い成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の診断、治療、臨床研究については、全科的に取り組んでいます。

2.診断

血液・膠原病内科における診断体制

くびの付け根やわきの下、足の付け根といった表面から触れるリンパ節や、検診の画像検査で胸やお腹の中のリンパ節が複数または大きく腫れている場合に悪性リンパ腫が疑われます。悪性リンパ腫であれば発熱や体重減少、大量の寝汗といったB症状を伴うことがあります。診断や治療方針を決定するために下記の検査を行います。

1.リンパ節生検 リンパ節腫脹をおこす病気は様々であり、悪性リンパ腫であることを確定診断するためにリンパ節生検は必須の検査となります。また、悪性リンパ腫にはHodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫、非Hodgkinリンパ腫にもB細胞リンパ腫やT細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫と様々な病型があり、病型毎に悪性度や治療方針も異なります。非常に重要な検査です。
2.表面形質検査 フローサイトメーターという細胞の表面形質を測定する機械でリンパ腫細胞を詳しく解析し、診断の補助としています。Hodgkinリンパ腫であればCD15やCD30、B細胞リンパ腫であればCD19やCD20、CD79a、T細胞リンパ腫であればCD2やCD3、CD5、CD7、NK細胞リンパ腫であればCD16やCD56が陽性となります。
3.染色体・遺伝子検査 悪性リンパ腫には多くの組織型特異的染色体異常が存在し、染色体分析は病態の理解と診断に重要な検査です。B細胞リンパ腫の免疫グロブリン遺伝子の再構成時に生じるエラーにより、ろほう性リンパ腫であればt(14:18)(q32;q21.3)、マントル細胞リンパ腫であればt(11;14)(q13;q32)のように特徴的な染色体異常が検出されます。
4.PET-CT検査 悪性リンパ腫の治療方針を決定する際に、限局期か進行期かによって抗がん剤の投与回数や放射線治療の適応が変わります。そのため、病変がどこにあるかを正確に評価する必要があります。PET-CT検査は腫瘍細胞が正常細胞に比べ糖代謝が亢進していることを利用し、ブドウ糖の類似体であるFDGの集積の程度や拡がりをみることで詳細に悪性リンパ腫の病期(ステージ)の評価ができます。
5.消化管内視鏡検査 悪性リンパ腫は胃や大腸といった消化管粘膜に病変を作ることがあります。大きな粘膜病変を伴う悪性リンパ腫の場合、抗がん剤治療後に消化管穿孔を起こすことがあるため、胃部不快や便潜血陽性など疑わしい症状がある場合には精査が必要となります。

3.治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

リンパ腫は上述のように様々な組織型に分類され、その一部の組織型においては病変が限られた領域に留まる場合には放射線療法が実施されますが、それ以外の場合には薬物療法(化学療法)を行います。

4.薬物治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(薬物治療)

悪性リンパ腫と診断され、組織型や病期が決定されるのと並行して治療方針を検討します。
悪性リンパ腫には急速に進行するアグレッシブリンパ腫とゆっくり進行するインドレントリンパ腫があり、インドレントリンパ腫の一部は無治療観察を行うことがあります。これはインドレントリンパ腫では、慢性リンパ性白血病の欄でも書きましたが、早期に化学療法を開始したとしても、腫れているリンパ節や腫瘤を小さくすることはできても、全体の治療成績を変えないとされているからです。
ステージ分類で限局期と進行期に大別し、進行期であれば全身化学療法を行いますが、限局期であれば放射線療法単独や全身化学療法の回数を減らし放射線療法を加える選択肢があります。悪性リンパ腫への治療には下記のようなものがあります。

1.化学療法 リンパ腫細胞の増殖抑制を目的として抗がん剤の投与を行います。悪性リンパ腫はHodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫に大別され、Hodgkinリンパ腫であればABVD療法(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用療法)、非Hodgkinリンパ腫であればCHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法)が選択されることが多いです。非Hodgkinリンパ腫にはB細胞リンパ腫やT細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫と様々な病型があり、CHOP療法で効果不十分とされるBurkittリンパ腫や成人T細胞白血病/リンパ腫、NK/T細胞リンパ腫では各疾患にあわせた化学療法を行っています。
特にホジキンリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は治癒の可能性が高い病気ですから、可能な限り標準治療を行う必要があります。
2.分子標的治療 リンパ腫細胞の表面抗原(カギ穴みたいなもの)を標的とし細胞傷害作用を誘導する抗体医薬品(カギみたいなもの)の開発が進んでおり、CD20抗原を有するB細胞リンパ腫へのRituximabやCD30抗原を有するHodgkinリンパ腫へのBrentuximab vedotin、CCR4を発現しているT細胞リンパ腫へのMogamulizumabが使用されています。従来の化学療法に比べリンパ腫細胞への優れた選択性があり正常細胞への傷害が少ない一方で、アレルギー様の症状を認めるインフュージョンリアクションやB型肝炎ウイルスの再活性化による劇症肝炎といった副作用・合併症に注意が必要です。
3.造血幹細胞移植 悪性リンパ腫への造血幹細胞移植は初回治療後の再発や化学療法への効果が不十分な場合に選択肢となります。患者さん自身の造血幹細胞を用いる自家移植と、他人(血縁者、骨髄バンクドナー、臍帯血)の造血幹細胞を用いる同種移植があり、悪性リンパ腫のほとんどが自家移植になります。成人T細胞白血病/リンパ腫は自家移植での予後が不良であるため、同種移植が選択されています。がん細胞を減らすことと造血幹細胞の拒絶を防ぐことを目的に大量抗がん剤や全身放射線照射を組み合わせて移植を行います。一般的な抗がん剤治療に比べ、造血幹細胞移植はその治療毒性や合併症の危険性が高いため、適応は若年者や合併症の少ない高齢者に限られており、安全に治療が行えるよう各症例にあわせて薬剤選択や用量調整を行っています。他人からの造血幹細胞の移植は、移植片対宿主病という副作用がある反面、再発しないよう監視してくれる免疫療法(移植片対腫瘍効果)としての期待があります。

5.放射線治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(放射線療法)

効果が全身に及ぶ化学療法と違って、病変に対する局所療法になります。照射野が広範囲とならない限局期の悪性リンパ腫では、全身化学療法による有害事象の軽減を目的とする場合や化学療法に抵抗性を示す場合に放射線療法を行います。インドレントリンパ腫では治癒を目指して行うこともあります。照射量は悪性リンパ腫の組織型や腫瘍の大きさ、化学療法抵抗性などにより決定し、複数回に分けて分割照射を行います。放射線療法の副作用には照射開始早期に起こる急性副作用と照射後6か月以降に出現する晩発副作用があります。急性副作用には口内炎や下痢といった粘膜障害や脱毛があり照射終了後にはほぼ改善します。晩発副作用には口腔内乾燥や肺線維症、心筋傷害、二次発がんがあり不可逆的なものが多く注意が必要です。

6.先進医療、臨床研究、治験

リンパ腫の一定の割合の患者さんは治癒のチャンスがあります。最大限の支持療法をしながら標準治療とされる強力な治療を行います。しかし種々の治療を行っても治療がうまくいかない場合、また高齢などのために臓器機能の低下のために、化学療法のメリットに限界がある場合には、患者さんやご家族の方と相談しながら、緩和的な化学療法を含む治療を行います。その場合は、緩和ケアを積極的に実施している医療機関やご自宅近くの医療機関をコアにして、生活の質を重視していくことになります。

先進医療、臨床研究、治験

血液・膠原病内科でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

国立がん研究センター研究開発費で運営される臓器がん多施設共同研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、リンパ腫グループのメンバーとして、あるいはそれ以外の多施設共同研究のコアとしてあるいはメンバーとして、臨床試験を積極的に行い、よりよい治療法の開発に取り組んでいます。
そのほか、常時複数の企業の開発治験に参加しています。

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