多発性骨髄腫

type12

担当診療科
血液・膠原病内科

腫瘍について

腫瘍について詳しくは「がん対策情報センター」でご紹介しています。下記のボタンからリンクします。

1.診療体制

血液・膠原病内科で取り扱っているがん

血液・膠原病内科では、多発性骨髄腫を含む造血器腫瘍の診療を広く行っています。
多発性骨髄腫は新規薬剤の導入が急速に進んでいますが、常に知識を刷新しながら細心の治療の実践に取り組んでいます。

2.診断

血液・膠原病内科における診断体制

多発性骨髄腫はBリンパ球が分化した形質細胞の腫瘍性増殖と、その産物である単クローン性免疫グロブリン(Mタンパク)の血清や尿中における増加が特徴です。主要症候としては貧血や腎機能障害、高カルシウム血症、溶骨による病的骨折などがあります。特に中年以降の方が腰の痛みを訴えるときには、多発性骨髄腫を疑う必要があります。このような場合は下記のような検査を行い確定診断します。

1.血液・尿検査 Mタンパクの増加による血清総蛋白高値とアルブミン低値(蛋白アルブミン解離)を認めます。血清と尿の蛋白電気泳動でMタンパクによるピーク(Mピーク)を評価し、免疫電気泳動法や免疫固定法で免疫グロブリンのクラスを決定しMタンパク血症を確定します。MタンパクはIgG型、IgA型、IgD型、Bence-Jones型、非分泌型に分類されます。Mタンパクには重鎖と軽鎖(κ鎖、λ鎖)の組み合わせからなりますが、重鎖が存在せず軽鎖のみのBence-Jones型もあり、診断の補助や治療効果をみる目的で血清の遊離κ鎖、λ鎖を測定することもあります。
2.骨髄検査 腸骨から骨髄の採取を行い、形質細胞の割合を評価します。全体の10%を超えて形質細胞の増加を認めた場合に多発性骨髄腫と診断されます。
3.表面形質検査 フローサイトメーターという細胞の表面形質を測定する機械で骨髄腫細胞を詳しく解析し、診断の補助としています。正常形質細胞で認めるCD38やCD138の陽性、細胞内のκとλの偏りなどが診断に役立ちます。
4.染色体・遺伝子検査 多発性骨髄腫の症例集積により、特徴的な染色体異常が明らかになってきています。14q32上の免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子との相互転座が約半数例に認められ、相手遺伝子として11q13(CCND1)、4p16.3(FGFR3/MMSET)、16q23(c-MAF)、20q11(MAFB)などがあります。t(4;14)、t(14;16)、t(14;20)陽性例や17p欠失例は一般に予後不良であり、染色体異常による治療方針の層別化なども検討され始めています。
5.画像検査 多発性骨髄腫による骨病変の評価を目的として頭部や胸腹部、骨盤、脊椎、四肢の全身X線撮影や単純CT検査を行っています。典型画像としては骨陰影の減弱、骨梁の異常、抜き打ち像、骨破壊像、腫瘤病変などがあります。脊椎圧迫骨折による脊柱管狭窄や骨髄腫による脊髄圧迫の評価のため、MRI検査を行うこともあります。

3.治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(手術・集学的治療等)

多発性骨髄腫の治療は薬物療法が主体ですが、骨病変のコントロールや骨髄腫細胞が固まり(形質細胞腫)を作って脊髄を圧迫する場合などには、放射線照射を行うこともあります。

4.薬物治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(薬物治療)

血液検査でMタンパクが同定され、骨髄検査で形質細胞の割合が10%を超えれば多発性骨髄腫の診断となります。多発性骨髄腫による貧血や腎機能障害、高カルシウム血症、骨病変といった症状を認めない無症候性(くすぶり型)多発性骨髄腫と、症状を認める症候性多発性骨髄腫があります。無症候性多発性骨髄腫では早期治療介入による生存期間延長効果が認められておらず、症候性多発性骨髄腫に進展するまで無治療で経過観察する場合があります。症候性多発性骨髄腫であれば下記のような治療を行っています。

1.化学療法 多発性骨髄腫への薬物療法は、従来はメルファランやシクロホスファミドなどの細胞障害性抗がん剤が中心でしたが、2000年代半ばから多くの新しい薬剤が使用されるようになり、骨髄腫細胞の自壊を誘導するプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブや免疫調節薬であるサリドマイド、レナリドマイドなどを併用して治療を行っています。このような治療薬の進歩によって、治癒することはできなくても、長期間にわたって病気のコントロールが可能な症例が出てきています。
2.造血幹細胞移植 多発性骨髄腫ではより深く腫瘍をコントロールしたほうが、その後の無再発や生存期間の延長を得られることが知られています。そのため65歳~70歳以下で重要な臓器機能が保たれている場合には造血幹細胞移植を計画します。造血幹細胞移植には自身の造血幹細胞を用いる自家移植と、他人(血縁者、骨髄バンクドナー、臍帯血)の造血幹細胞を用いる同種移植がありますが、多発性骨髄腫では自家移植が行われることがほとんどです。骨髄腫細胞を減らす目的で大量抗がん剤治療を行ったのち、造血機能を回復させるために事前に採取して凍結保存しておいた自身の造血幹細胞を移植します。

5.放射線治療

血液・膠原病内科で取り扱う治療(放射線療法)

多発性骨髄腫では、腫瘍浸潤による脊髄への圧迫で麻痺や機能障害を認めることがあります。脊髄圧迫による神経障害は、早期治療介入での圧迫解除を行わないと後遺障害を残す腫瘍の緊急症と呼ばれるものの一つです。多発性骨髄腫は放射線治療への感受性が良い腫瘍ですので、腫瘍による脊髄圧迫を認めた場合は、直ちに放射線治療を行っています。

6.先進医療、臨床研究、治験

多発性骨髄腫は完全に治す(治癒)することは困難な病気ですが、近年の薬物療法の進歩によって、長期間にわたって病気のコントロールをつけ、症状をとることができるようになってきました。しかし種々の治療を行っても治療がうまくいかない場合、また高齢などのために臓器機能の低下のために、化学療法のメリットに限界がある場合には、患者さんやご家族の方と相談しながら、緩和的な化学療法を含む治療を行います。その場合は、緩和ケアを積極的に実施している医療機関やご自宅近くの医療機関をコアにして、生活の質を重視していくことになります。

先進医療、臨床研究、治験

血液・膠原病内科でおこなっている高度医療、最新の治療、研究等

国立がん研究センター研究開発費で運営される臓器がん多施設共同研究グループである日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、リンパ腫グループのメンバーとして、あるいはそれ以外の多施設共同研究のコアとしてあるいはメンバーとして、臨床試験を積極的に行い、よりよい治療法の開発に取り組んでいます。
そのほか、常時複数の企業の開発治験に参加しています。

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