診療科案内(医科診療科)

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

099-275-5870

耳鼻咽喉科・頭頸部外科の紹介

耳鼻咽喉科全般、めまい、難聴、中耳炎、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、扁桃炎、嗅覚・味覚障害、睡眠時無呼吸症候群(いびき)、のどの違和感や声がれ(声帯ポリープ)、鼻・口・のど・首のできもの(副鼻腔癌、舌癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌など)の診察、治療を行っています。

耳鼻咽喉科疾患概説

耳疾患

耳は外から外耳、中耳、内耳に分けられます。
外耳で音を集めて、中耳で外耳から伝わってきた振動を効率よく内耳へ伝え、内耳で振動を電気信号に変えて神経や脳に伝えます。

耳疾患

正常鼓膜
右鼓膜 左鼓膜

 

疾患 主な症状・治療
急性中耳炎

急性中耳炎

鼓膜の赤みと腫れ

急性中耳炎は子供に多く見られる中耳の感染症です。耳と鼻をつなぐトンネル(耳管)を通じて、本来は無菌状態である中耳に、鼻からウイルスや細菌などの病原体が侵入し、炎症を起こした状態です。耳が痛い、飛行機に乗った時のように耳が詰まる、聞こえが悪くなる、などの症状があり、耳だれを認めることもあります。 抗菌薬を用いた治療が中心となりますが、重症の場合には鼓膜切開を行って中耳の膿を排出させることがあります。抗菌薬が発達した現在では稀となりましたが、炎症が周囲に広がると内耳炎(めまいを伴う)、顔面神経麻痺(顔の半分が動かない)、急性乳突洞炎(耳の後ろが腫れる)などを合併することがあります。
慢性中耳炎

慢性中耳炎

鼓膜に大きな穴

急性中耳炎を繰り返す、または治りが悪いことなどが原因となって、鼓膜に穴があき、そのことによる難聴、耳だれ、耳が詰まるなどの症状があります。感冒の時や、水泳などで耳の中が濡れた後などに症状が出ることが多くあり、そのたびに耳だれを繰り返します。鼓膜の穴を閉じるためには、手術が必要となります。
滲出性(しんしゅつせい)中耳炎

滲出性(しんしゅつせい)中耳炎

鼓膜の凹みと鼓膜の中に貯留液

中耳に滲出液と呼ばれる液体が貯留する病気で、難聴や耳が詰まる、などの症状があります。通常、痛みや発熱がないために、子供では症状を自覚しないで偶然発見されることも多くありますが、ご両親から「声をかけても振り向かないことが多い」、「テレビの音が大きい」などの訴えで耳鼻科を受診し、発見されることもあります。
発症から3か月以上つづく場合には、鼓膜を切開してチューブを留置することがあります。子供でアデノイド(鼻のいちばん奥にあるリンパ組織)が大きいことが原因の場合には、アデノイド切除も行います。
成人の場合は、滲出性中耳炎の原因として上咽頭癌が潜んでいることもあり、注意が必要です。
真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎は慢性の中耳炎の一種です。真珠腫という耳垢の塊のようなものが中耳からその周囲へと骨を溶かしながら大きくなっていく病気です。見た目が白く真珠のようにみえるため、このような病名になっています。稀に生まれつき真珠腫があることもあります。真珠腫が大きくなると、難聴や耳が詰まる感じが出現します。真珠腫が中耳より奥へ広がると、めまいや顔面神経麻痺(顔の半分が動かない)を生じることがあります。また、真珠腫が頭の中へ広がってしまうと、そこで感染を起こし、重篤な症状をきたすこともあります。多くの場合で手術が必要になります。再発することがある中耳炎なので、術後も定期的な診察が必要です。
メニエール病 難聴、耳鳴りとともにめまい発作を繰り返す病気です。めまいの状態を確認し、聴力検査やMRI検査などの検査を行い、診断します。
治療は、病気に応じて症状を軽くするための薬物療法や、リハビリが主体になる場合もあります。めまい・吐き気以外の症状がある場合は、他の脳の病気が原因のこともあるため、注意が必要です。
良性発作性頭位めまい症 頭の位置を変えた時に発作的に回転性めまいを生じる病気です。めまいの状態を確認して、診断をします。発作的に生じた回転性のめまいは持続時間が比較的短時間であるのが特徴です。
治療は、病気に応じて症状を軽くするための薬物療法や、リハビリ治療を行います。病名に“良性”、とあるように自然と良くなることも多い病気です。
顔面神経麻痺 突然発症する片方の顔つきの変化(顔の片側に力が入らない:おでこのしわ寄せができない、目が閉じない、口が動かない、食べ物がこぼれるなど)が出現し、味覚の障害、涙が出ないなどの症状をきたすこともあります。多くはベル麻痺と呼ばれるもので、側頭骨という頭の骨の内の顔面神経の神経節に潜伏感染したウイルスの再活性化が病因とされています。
治療は副腎皮質ステロイド製剤、抗ウイルス剤による薬物療法を行います。帯状疱疹ウイルスが原因となるラムゼイ・ハント症候群の場合には、難聴やめまいに加えて、耳の痛み、耳の周りの皮疹が出ることもあります。
薬物治療を行っても麻痺が全く良くならない場合には、手術(顔面神経減荷術)を行うこともあり、当科でも行っています。
また、顔面神経の通り道である耳下腺に悪性腫瘍があることや、脳の中の神経の障害で起こることもありますので、CT検査、MRI検査などの検査を行うことも重要です。
突発性難聴 突然に生じる原因不明の難聴です。めまいを伴うものでは難聴も高度で回復も困難となる頻度が高くなります。
通常は、片耳に起こります。様々な聴力の検査により診断を行います。メニエール病や、脳や内耳の神経の通り道である聴神経の腫瘍などの病気が、突発性難聴のような形で発症することもあり、MRI検査などの画像検査を行う場合もあります。
突発性難聴の治療は、ステロイド薬の飲み薬や点滴、循環改善薬やビタミン剤の投与、高気圧酸素療法を組み合わせて行います。
鼻疾患

鼻は空気の通り道の鼻腔とその周りに左右4か所ずつある副鼻腔でできています。
副鼻腔のすぐ近くには眼球や脳があります。

鼻疾患

疾患 主な症状・治療
急性副鼻腔炎 ウイルス感染症、細菌感染症などをきっかけに、鼻詰まり、粘り気のある色の汚い鼻水、後鼻漏(のどに鼻水が落ちてくる)、嗅覚障害などを自覚し、おでこ、頬、目の奥が痛むこともあります。顔面のレントゲンやCT検査、鼻の中の所見などで診断します。
治療としてはまずは薬物治療や鼻洗浄などを行います。
慢性副鼻腔炎 3ヶ月以上続く鼻づまり、汚い鼻水、後鼻漏、嗅覚障害などが主な症状です。俗に蓄膿(ちくのう)といわれます。
鼻内の観察、CT検査などを行って診断します。鼻茸(ポリープ)を伴うこともあります。まずは、鼻洗浄や薬物療法などの治療を行います。通常3ヶ月たってもこれらの治療による効果がない場合には、手術を行います。昔の手術では上の唇の裏を切開して行っていましたが、手術の道具の発達に伴い、現在は鼻の穴から内視鏡を使った手術を行います。また、ナビゲーションシステムや病的粘膜を切除する機器などを用いて、より安全に手術を行うことができるようになりました。内視鏡下鼻副鼻腔手術は病状に応じて通常I型からIV型が行われますが、当院はより高度で困難なV型にも対応可能な施設です。
慢性副鼻腔炎の中には好酸球性副鼻腔炎というとても治りにくい副鼻腔炎があり、指定難病にもなっています。この病気は喘息や鎮痛剤などのお薬アレルギーを持つ方に生じやすいです。嗅いがわからないということで耳鼻咽喉科を受診して見つかることもあります。術後に再発をすることが多く、長期にわたる治療が必要となります。
副鼻腔真菌症 副鼻腔の中の真菌(カビ)の感染により、慢性的な炎症を起こします。ステロイド薬や免疫抑制剤を内服している方、ご高齢の方や、糖尿病などの基礎疾患による免疫の力が低下している方などに多く発症します。骨の破壊などを伴わないもの(非浸潤型)であれば無症状であることも多く、C T検査などで偶発的に発見されることもあります。しかし、周囲を破壊しながら増大する浸潤型の真菌症である場合には、視力低下や頭の中まで急速に進行することがあり、死亡することもあります。
治療は手術によって副鼻腔を大きく開けて、洗浄していきます。浸潤型などの急激な経過をとる場合は緊急手術を行い、真菌に対する薬剤を用いて濃厚な治療を行います。
アレルギー性鼻炎 水っぽい鼻水、鼻づまり、くしゃみが主な症状です。アレルギーの原因物質が花粉である場合には季節性に症状があり、ハウスダストやダニである場合には一年中症状が続く場合があります。両方を合併している場合もあります。多くの場合、薬物治療により症状が良くなりますが、長期寛解を目的としたアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)を行うこともあります。薬物治療だけでは症状改善がみられないときや、鼻の中の構造上の問題で鼻づまりが改善しない重症アレルギー性鼻炎では、鼻の中の通りを良くして、鼻の中のアレルギーを起こす神経を切断する手術(後鼻神経切断術)を行います。
鼻中隔弯曲症 鼻の左右を分けるついたてを鼻中隔と呼び、その曲がり方が強いと鼻づまりの原因になります。内視鏡検査、画像検査、鼻の中の空気抵抗をはかる鼻腔通気度検査などで鼻中隔弯曲や鼻閉の程度を評価します。
鼻づまりの程度が強い場合は、症状改善を目的とした手術(鼻中隔矯正術)を行います。手術は鼻の穴から内視鏡を用いてより安全に行えるようになっています。
鼻副鼻腔乳頭腫 鼻副鼻腔乳頭腫は鼻や副鼻腔に生じる良性の腫瘍です。大きな腫瘍であれば、片方の鼻づまりの症状を認めますが、C T検査や副鼻腔炎として治療中にたまたま発見されることもあります。薬物療法は効果がないため、治療は手術が選択されます。乳頭腫の中でも内反性乳頭腫は、癌を合併することもあるため早期の治療が必要です。
咽頭疾患

咽頭疾患咽頭疾患

疾患 主な症状・治療
急性扁桃炎 口蓋扁桃(俗にいう扁桃腺)と呼ばれるリンパ組織に細菌やウイルスが増殖することが原因となって起こる炎症性の病気です。症状は発熱、のどの痛みなどがあり、特に飲み込むときの痛みがあります。
症状が軽いときにはうがいや、痛み止めなどで治療することもありますが、発熱を伴う細菌性の扁桃炎の場合には抗菌薬を使った治療が必要になります。ウイルス性の扁桃炎の場合には抗菌薬は効果がないため、痛み止めやうがいなどで治療します。のどの痛みが強く、唾が飲めない、食事が取れない場合には入院した上で点滴治療を行う場合もあります。
扁桃周囲膿瘍
扁桃周囲膿瘍
扁桃の外側に炎症が広がり、膿瘍に押されて口蓋垂が偏移している
急性扁桃炎の炎症が扁桃の周囲に広がり、膿のかたまりができてしまったものを扁桃周囲膿瘍と呼びます。高熱、のどの痛み、くびの痛みが主な症状です。炎症がすすむと唾も飲み込めず、口が開けられない状態(開口障害)となります。診察、内視鏡検査、造影CT検査を行って診断します。
抗菌薬の点滴に加えて針や切開によって膿を出す(排膿処置)を行います。
反復性扁桃炎 急性扁桃炎を定期的に繰り返してしまう病気です。症状は、喉の痛み、喉の違和感、口臭、微熱または高熱などの症状がみられます。治療は、症状がある時にはまず薬物療法を行います。飲み薬、点滴などで治療を行っても定期的に症状を繰り返す場合には、口蓋扁桃摘出術を行います。
また、血尿などを生じるIgA腎症や手のひらや足の裏に皮疹を生じる掌蹠膿疱症など、口蓋扁桃が病気の一因となっている病気(扁桃病巣疾患)においても口蓋扁桃摘出術を行っています。
睡眠時無呼吸症候群 症状は夜間のいびき、無呼吸と日中の眠気があります。寝ているときの呼吸状態を検査(簡易型睡眠検査や終夜睡眠ポリソムノグラフィー)することで診断します。
子供の場合には、寝ている時に胸を凹ませながら呼吸したり、口が開いたままで鼻の横のしわがなくなったり、特徴的な顔つきを認める場合があります。また、成長障害(体が小さい、食が細いなど)を伴うこともあります。口蓋扁桃が大きいこと(扁桃肥大)や鼻の奥のリンパ組織が増大していること(アデノイド増殖症)が原因となることが多く、その場合は扁桃摘出術やアデノイド切除術を行います。またアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの合併による鼻呼吸の障害によることが原因になっていることもあるため、鼻に対する治療を行う場合もあります。
大人の場合は、肥満者に多く見られますが、下顎が小さい方では痩せた方にも起こります。未治療のままでは、脳血管障害や狭心症、心筋梗塞を発症する頻度が増加するため、歯科装具の使用や、寝るときに呼吸に合わせて持続的に鼻から空気を送り続ける機械である経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法の導入を検討します。肥満が一因となっている場合は、減量も重要です。
喉頭疾患

喉頭疾患

疾患 主な症状・治療
急性喉頭蓋(こうとうがい)炎
急性喉頭蓋(こうとうがい)炎
喉頭蓋が腫れて呼吸の通り道が狭くなっている
喉頭蓋は喉頭(息を吸うところ)の蓋であり、食べ物などが気管に間違って入らないようにする部分です。急性喉頭蓋炎は細菌などの感染によりこの喉頭蓋に腫れをおこす病気で、緊急性の高い疾患です。
最初の症状は喉の痛み、特に飲み込むときの痛み、発熱などが多いですが、悪化すると呼吸困難や呼吸をするときにのどの雑音を生じることがあります。全身や呼吸の状態、内視鏡検査、C T検査などの検査などにより診断します。呼吸の通り道が狭くなり、窒息の可能性があるため、通常入院の上で抗菌薬やステロイド製剤の点滴を行います。喉頭蓋の腫れが強くなり、気道閉塞の可能性が高い場合は、酸素投与をはじめ、口から呼吸の管を入れたり(気管内挿管)や頸部から直接気管までの穴をあける気管切開術など緊急の気道確保が必要になります。
反回神経麻痺
反回神経麻痺
麻痺している声帯(←)は細くなり弓のように変化する
反回神経は声帯を動かす神経で、その反回神経の障害により、声を出す臓器である声帯の運動の障害が生じる病気です。
原因としては甲状腺癌、首に転移した癌による腫瘍、肺癌、食道癌、心臓大血管疾患とその術後などがあります。片側の麻痺は、ごく軽度の嗄声(声枯れ)から非常に高度な発声障害までの様々の程度の嗄声や、飲み込むときのむせなどの症状をきたします。高度の発声障害では、会話を続けることによる疲労・倦怠感といった身体症状を起こします。
診断は、喉頭内視鏡などで声帯の運動を観察することでなされます。片側性麻痺で高度な嗄声を伴う場合には、声帯内注入術や声帯内方移動術などを行います。ただし、感冒や神経性、手術・挿管性の場合には回復の可能性があるので、発症後3-6ヵ月は保存的治療で経過を観察します。当院では、音声外科手術であるアテロコラーゲンによる声帯内注入術や甲状軟骨形成術を積極的に行っています。
声帯ポリープ
声帯ポリープ
声を出す声帯に浮腫性の腫瘤が作られ、声枯れを自覚します。原因は声の酷使、喫煙、急性の炎症などとされており、声をよく出す仕事の方や、日常的に大きな声を出す方に多く発生します。しばらくの間、声を安静にすることで改善することもありますが、改善しない場合には全身麻酔下に顕微鏡や内視鏡をもちいた喉頭手術を行い、術後しばらくの間は声を出すことを控える必要があります。粘膜の表の皮をなるべく温存するマイクロフラップ法や全身麻酔の困難な方に対する局所麻酔下手術にも対応しています。
ポリープ様声帯
または
浮腫性声帯炎
ポリープ様声帯 または 浮腫性声帯炎
両側声帯がむくんでいる
声帯が全体に強くむくんで腫れている状態です。女性の喫煙者に多く発生し、慢性に経過します。声枯れ、声の低音化を自覚し、浮腫が増悪して両側に病変を認める場合には呼吸困難を生じることもあります。軽度であれば、禁煙と声の安静である程度の改善が見られますが、高度の場合には全身麻酔下の喉頭手術を行います。術後の声の安静と、禁煙を徹底することで再発を防ぎます。
声帯結節
声帯結節
声帯の慢性的な機械刺激、慢性の炎症などが原因となり、声帯の中央あたりが硬く変化してできもので、声枯れを自覚します。声を過度に使う職業(保育士、小学校教師など)の方に多く発症します。また、子供でも発症することがあり、習い事や部活動で声を使いすぎることで発症することもあります。小児例では声変わりを待ちます。成人例では声帯ポリープのように軽症の場合には声を安静にすることで、改善することもありますが、改善がない場合には手術も考慮します。局所麻酔下に副腎皮質ステロイド製剤を声帯に注入したり、全身麻酔下の手術の対象となったりする方もおられます。
喉頭肉芽腫
喉頭肉芽腫
声帯の後方にできる肉芽(炎症組織)で、胃酸逆流による刺激、声を酷使する、または全身麻酔などで経口挿管による刺激が原因となり発症します。ただし、声枯れを生じることは少なく、自覚症状のないことが多いですが、胃酸逆流症による胸やけや肉芽腫が大きくなったことによる、のどの違和感を自覚することがあります。治療は、原因にもよりますが、薬物治療や手術による切除を行います。
喉頭乳頭腫
喉頭乳頭腫
声帯にカリフラワーのような腫瘍(乳頭腫)ができ、嗄声(声枯れ)を自覚します。ヒトパピローマウイルスによる感染が原因となり、再発、多発することが特徴です。子供のうちに発症する場合と、成人してから発症する場合があります。治療は基本的には手術を行いますが、再発しやすいという点から、術後に補助療法として漢方薬などの薬物療法を行います。
痙攣性発声障害 声を出そうとする際に自分の意思とは無関係に声帯が異常な動きをしてしまい、声の出しにくさを自覚する病気です。発声器官である喉頭には器質的異常や運動麻痺などは認めない、声を出す時に生じる発声障害です。正確な原因は不明とされてきましたが、喉頭の局所に生じるジストニア(不随意運動)が原因と考えられています。リラックスしているところでは問題なく声を出せても、大勢の前やストレス下で声の出しにくさを感じ、他人には伝わらないことも多いです。20−40歳の女性に多く発症します。喉頭内視鏡検査や音声機能検査で診断を行います。
治療はまずは言語聴覚士による発声訓練を3ヶ月行います。その後、改善に乏しい場合には相談のうえ、A型ボツリヌス毒素の内喉頭筋内注入療法、またはチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術Ⅱ型(当科は同手術実施可能施設です)の選択肢から方針を決定していきます。

当院では発声の異常を認める場合には手術前、手術後に声の各種検査を積極的に行うことで、他覚的に治療の評価を行っています。

頭頸部疾患

咽頭疾患・頭頸部疾患

頭頸部悪性腫瘍

頭頸部領域には、耳、鼻、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺、唾液腺の癌があります。口腔、咽頭、喉頭の癌で、飲酒、喫煙の習慣がある場合には、食道癌や同じ頭頸部内に複数の癌が見つかることがあります。診断は、いずれにおいても内視鏡検査、病理組織学検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、PET/CT検査で行い、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無で、病期分類(ステージ分類)を評価します。その病期に合わせて、手術療法、放射線療法、化学療法などを組み合わせて治療方針を決めます。

疾患 主な症状・治療
上咽頭癌 上咽頭は鼻の奥、口蓋垂、口蓋扁桃(扁桃腺)の後ろ、頭蓋底のすぐ下で、左右には耳につながる穴がある部位です。後鼻鏡と言われる器具や、内視鏡などを使わないと観察が難しい部位であるため、上咽頭癌は早期にはなかなか発見しづらい癌です。自覚する症状は、首のしこり(頸部のリンパ節転移)や、鼻づまり、耳のつまり(滲出性中耳炎など)、難聴や、脳神経症状(物が二重に見える)などがありますが、これらは腫瘍がある程度進行してから自覚する症状です。
EBウイルスが癌の発生する原因として知られています。
治療は、手術が難しい部位であるために、主に化学療法(抗癌剤)を併用した放射線治療が選択されます。
中咽頭癌 中咽頭癌は、中咽頭(扁桃、舌根)に発生する悪性腫瘍です。飲み込むときの違和感、喉の痛みで発症し、進行すると飲み込みづらさや、こもった声などを自覚します。首のしこり(頸部のリンパ節転移)が最初に自覚する症状となることもあります。ヒトパピローマウイルスが関与する中咽頭癌は治療効果が高いとされ、その有無により病期分類が異なります。また血液の悪性腫瘍(悪性リンパ腫)の場合もあります。
病期分類(ステージ分類)により、手術療法、放射線療法、化学療法を組み合わせて治療を行います。
近年、喫煙率の低下に伴い頭頸部癌全体の有病率は減少傾向にありますが、中咽頭癌は逆に増加傾向です。当院でも約10年前よりヒトパピローマウイルスの有無を評価し、積極的に治療を行っております。
下咽頭癌 下咽頭は中咽頭より下で、食道につながる食事の通り道です。下咽頭癌は、早期の段階では自覚症状はないですが、進行するにつれて、喉の痛み、飲み込むときの痛み、血痰、声枯れ、息苦しさなどの多彩な症状が急速に出現します。近年は上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査がよく行われており、人間ドックなどで偶然無症状のうちに発見される症例も増えてきています。
病変の進行度に応じて、声を出すところである喉頭機能の温存を考慮しつつ治療方針を決定します。化学療法、放射線療法、手術療法を組み合わせて行います。
当院では早期癌に対しては喉頭機能温存の観点から、より侵襲が少ない経口切除術を積極的に取り入れております。また進行癌には、咽喉頭頸部食道摘出術を施行し、遊離空腸を用いた再建手術を行っております。また喉頭を全摘出した場合は、代用音声として、ボイスプロテーゼという発声させるチューブの留置術も積極的に行い、生活の質の保持に努めています。
喉頭癌 喉頭は、発声に関与する声門部、食事の時に誤嚥しないように蓋をする喉頭蓋のあたりの声門上部、声帯より気管(下)側の声門下部に分けられます。癌が発生する場所によって、自覚症状が異なります。声門癌は最も発生が多い部位であり、声枯れが出現しやすく、比較的早期に発見されやすい癌です。声門上部癌と声門下部癌は早期には症状が出現しにくく、かなり進行してからリンパ節転移、声枯れや呼吸苦などの症状が出ます。
早期癌であれば、手術または放射線治療が奏功することが多いですが、進行癌の場合には手術、放射線治療、化学療法を組みあわせた治療が必要となります。喉頭全摘出術を行なった場合、代用音声としてのボイスプロテーゼ留置を積極的に行っています。
鼻副鼻腔癌 鼻の中の空間である副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)に発生する癌です。
早期では発見しにくく、病気が進行して、鼻閉、鼻出血、眼痛、頭痛などの自覚症状が出現してから発覚することが多いです。
治療は主に化学療法、放射線治療、手術を組み合わせた治療になります。
鼻副鼻腔癌の中でも上顎洞内に発生する上顎洞癌については、近年、血管内カテーテルを使用して腫瘍の栄養血管(動脈)に選択的に高濃度の抗癌剤を注入する動注化学療法を放射線治療に併用する動注化学放射線療法が行われるようになりました。当院においても動注化学放射線療法を積極的に行い、顔面の変化やそしゃく・嚥下機能障害を伴う手術を回避することに努めています。
手術が必要な場合には、欠損部位の再建術や義歯の調整を行うことで、食事を噛む・飲み込むなどの機能を維持するよう努めています。病変の状況により、鼻内からの内視鏡手術、または顔面切開による腫瘍切除手術を行います。
口腔癌 口の中に発症する癌で過半数は舌癌がしめています。そのほかには頬粘膜癌、歯肉癌、口腔底癌、硬口蓋癌、口唇癌などです。口腔内の不衛生や、義歯の不適合、喫煙、飲酒などによる慢性刺激が誘引となります。歯科で発見されることも多くあります。治療は腫瘍の進行度に応じて決定しますが、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて行います。
口腔は食事、会話などに関与しており、手術を選択する場合には、切除する部分が大きくなる場合には、欠損した部分を補う再建術も同時に行なうことで、術後のそしゃく(噛むこと)・嚥下機能などの生活の質を保つように心がけます。
甲状腺癌 甲状腺に発生するがんです。頸部のしこりを自覚することもありますが、無症状で画像検査によって偶然に発見されることもあります。癌が増大すると、甲状腺の裏を走る反回神経の浸潤による声枯れや、飲み込みにくさ、のどの圧迫感などを自覚します。
甲状腺がんの組織型の90%は乳頭癌ですが、その他に濾胞癌、低分化癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫があります。治療はがんの種類やその病期により異なりますが、手術と放射線治療、薬物療法を組み合わせて行います。当院では気管浸潤を認める症例に対して、気管再建術も積極的に行っています。
唾液腺癌 唾液の分泌などを行っている耳下腺、顎下腺、舌下腺、および小唾液腺に生じる癌です。癌の組織型の種類が他の部位に比べて多く、その悪性度も低悪性度から高悪性度まであります。自覚症状は頸部のしこりや、痛み、顔面神経への浸潤による顔面神経麻痺などがあります。治療は、まずは手術を選択します。低悪性度であれば、手術による完全切除で良好な経過となりますが、高悪性度の場合には手術後に化学療法や放射線治療などの追加治療が必要となります。
頭頸部良性腫瘍 首のはれ、しこりが症状です。感染を合併している時以外は痛みがあることは少ないです。腫瘍が小さい場合は自覚症状がなく、超音波検査などで偶然に発見されることもあります。
主な病気には脂肪腫、嚢胞(液体の入った袋)、神経鞘腫(神経の線維にできる腫瘍)、顎下腺腫瘍、耳下腺腫瘍、甲状腺腫瘍などがあります。診断にはCT検査、MRI検査、超音波検査、病変の組織を一部採取して行う病理の検査などの検査を行い、大きさは病変の状況によって摘出術を行います。
それぞれの腫瘍の種類、場所によって、気をつけるべき神経、血管があり、それらに注意して手術を行います。神経モニターなどの機械を使用し、より安全な手術を心がけています。
(例)耳下腺腫瘍:顔面神経(顔を動かす)
甲状腺腫瘍:反回神経(声帯を動かす) など
ただし、感染状態にある場合には感染が落ち着いてから手術を行います。

 

 

 

特殊(専門)外来

アレルギー外来 スギ花粉症に代表される鼻アレルギーの原因(アレルゲン)を調べ、特異的抗原による減感作治療を行うことで根本的治療をめざす。補助的治療として薬物療法を行い、適応ある場合には外科的治療も行う。
副鼻腔炎外来 硬性内視鏡および副鼻腔ターゲットCTを用いて副鼻腔の詳細な観察・精査を行う。また手術治療後の定期的観察を行い再発予防に努める。
耳鳴り・補聴器外来 耳鳴りの原因を精査し病態に応じた治療を行う。補助的器具(TRT)による耳鳴り解消も目指す。また、難聴症例では補聴器フィッティングを行い、補聴器の適正使用を指導する。
頭頸部腫瘍外来 鼻副鼻腔癌、咽頭癌、舌・口腔底癌、喉頭癌など頭頸部領域の悪性腫瘍に対して、内視鏡・画像診断などを含む総合的評価を行い、臨床診断に基づいて集学的治療を行う。さらに治療後の厳重な経過観察を行い、再発防止に努める。
めまい外来 めまいの原因を平衡機能検査、眼振計などを用いて精査し病態に応じた治療を行う。めまいの理学療法、リハビリなどの指導を行う。

医師紹介

  氏名 職名 専門分野
科長 山下 勝 教授 鼻科学、口腔咽頭科学、喉頭科学、頭頸部外科学
外来医長 永野 広海 講師 鼻科学、口腔咽頭科学、頭頸部外科学
病棟医長 大堀 純一郎 准教授 耳科学、鼻科学、口腔咽頭科学、頭頸部外科学
スタッフ 宮之原 郁代 非常勤 耳科学、めまい・平衡医学、難聴の遺伝カウンセリング
宮下 圭一 助教 鼻科学、口腔咽頭科学、頭頸部外科学
川畠 雅樹 助教 鼻科学、口腔咽頭科学、頭頸部外科学
田淵 みな子 助教 耳科学、鼻科学、口腔咽頭科学
大原 章裕 助教 頭頸部外科学、頭頸部内科学、めまい・平衡医学
宮本 佑美 特任助教
松元 隼人 医員
松崎 尚寛 医員
安藤 由実 医員
徳重 豪士 医員

※専門外来は、初診・再診どちらも曜日指定があります。

初診診療曜日 月・火・水・木・金
初診の方は、紹介医より医務課外来予約担当(電話099-275-5168、FAX099-275-6698)にて予約をとり、紹介医からの紹介状をご用意下さい。
再診診療曜日 火・木(予約制) 月・水・金(特殊検査日)
受付時間 8:30~11:00(初診)
予約の方は、予約10分前には診療部門科受付へおいでください。
診療時間 8:30~17:00
休診日 土曜日・日曜日・祝祭日・年末年始(12月29日~1月3日)
※診療部門科の都合により、診療日が変更になることもあります。

実績

診療科で扱った主な手術や処置の件数 2020年1月~12月

耳科手術
 鼓室形成術 21
 鼓膜チューブ挿入術 14
 顔面神経減荷術 2
 先天性耳瘻管摘出術 5
 外耳道形成術 3
 乳突削開術 6
 外耳道腫瘍摘出術 7
鼻科手術
 内視鏡下鼻・副鼻腔手術 152
 鼻中隔矯正術 56
 鼻甲介切除術 79
 眼窩吹き抜け骨折手術 3
 顎・顔面骨折整復術 4
 鼻前庭嚢胞摘出術 3
口腔咽喉頭手術
 扁桃摘出術 80
 アデノイド切除術 14
 舌、口腔、咽頭腫瘍摘出術
  舌・口腔良性腫瘍摘出術 4
  舌・口腔悪性腫瘍摘出術 3
  咽頭良性腫瘍摘出術 2
  咽頭悪性腫瘍摘出術 44
 喉頭微細手術 26
 嚥下機能改善、誤嚥防止、音声機能改善手術 6
頭頸部手術
 頸部郭清術 44
 頭頸部腫瘍摘出術 90
  顎下腺良性腫瘍摘出術 6
  顎下腺悪性腫瘍摘出術 2
  耳下腺良性腫瘍摘出術 21
  耳下腺悪性腫瘍摘出術 4
  甲状腺良性腫瘍摘出術 5
  甲状腺悪性腫瘍摘出術 6
  鼻・副鼻腔良性腫瘍摘出術 10
  鼻・副鼻腔悪性腫瘍摘出術 5
  喉頭悪性腫瘍摘出術 14
  リンパ節生検 10
  頸部良性腫瘍摘出術 7
  顎下腺摘出術 5
  舌下腺摘出術 1
  頸部嚢胞摘出術 6
  頸部膿瘍排膿術 2
  気管孔閉鎖術 3
ボイスプロテーゼ挿入術 3
異物摘出術(外耳・鼻腔・咽頭) 2
  気管切開術 24

場所

3階フロア 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

※正面玄関は午前6時から午後6時まで(土・日・祝祭日は除く)